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ドクヤマドリの毒成分・中毒症状・見分け方など

最終更新日:2023年8月25日(画像はWikipediaより)

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ドクヤマドリ(毒山鳥、学名:Sutorius venenatus)とは、イグチ科ウラグロニガイグチ属に分類されるキノコ。名前通り有毒で、ヤマドリタケ(ポルチーニ)と似ているのが特徴。

イグチ類は美味なキノコにあふれる一方、目立った有毒種も当時なかったことから「イグチに毒菌なし」なんて神話があった。それを崩壊させた元凶こそが、このドクヤマドリなのだ。

1995年に長澤栄史氏によって新種発表されたが、それ以前も長野県で「太平」という男がこのキノコを食べて亡くなった例から「タヘイイグチ」として名が知られていた。

特徴

夏〜秋にかけて、主にエゾマツ、シラビノなどの亜高山帯針葉樹林の地上に単生〜群生する。日本では本州一部の高山帯や北海道などで発生が確認される。現在、東アジア以外では発見されていない。

傘は径10〜20cm、時に25mcの大型となる。傘は初め半球形、のち平らなまんじゅう形。表面は黄褐色で、ややビロード状、のちにわずかにフェルト状になり、成熟すると湿時に多少粘性を持つ。

管孔は柄に対して上生し、初めは淡黄色だが、成熟すると黄褐色となる。弱い変色性を持ち、傷つけるとゆっくり青変した後、黄褐色〜褐色のシミとなって残る。

柄はほぼ上下同大、または中央部がやや太い。表面は始め白色だが、成熟に従って汚黄色〜淡黄褐色となり、やがて上部に赤褐色のシミができる。網目模様を持たないが、これはヤマドリタケとの判別に重要な特徴となる。

胞子は紡錘状〜長楕円形で、大きさは13〜14×4.5〜5um程となる、

類似種との見分け方

よく似たキノコは主に、

ヤマドリタケ(食)

ヤマドリタケモドキ(食)

などがある。特にヤマドリタケは本種と同じく亜高山帯の針葉樹林に発生するので注意が必要。

ヤマドリタケは柄の上部に網目模様がある、変色性がないといった違いがあり、十分な知識を持っていれば見分けるのは容易だろう。

ヤマドリタケモドキは発生環境がことなり広葉樹林に発生し、柄の全体に網目模様があるなどの違いがある。

毒成分

単離された毒成分はボレベニン(bolevenine)、及びイソレクチン(isolectin)などのタンパク性毒成分。

タンパク質は数多くのアミノ酸が重なった高分子化合物で、溶血作用を示すものが多い。

ボレベニンはマウスに対して腹腔内投与したところ、致死性を示すことが確認されている。

中毒症状

摂取すると2〜5時間程で腹痛、下痢、嘔吐などの症状を起こす。

毒性は高く、たとえ少量でも激しい胃腸系中毒を起こし、重症の場合は脱水状態によって死に至る危険もある。

時に腎障害(例:喉の渇きなど)をきたす例もあるという。

中毒例

平成元年〜22年にかけて、少なくとも20件と72名の患者が報告されており、ヤマドリタケと誤食されるケースも多い。

更に昭和へ遡ると本種によると思わしき中毒例があり、1974年と1984年にはヤマドリタケ似のキノコによる食中毒が記録されている。

これが後にヤマドリタケと異なる種類と混同していたのが判明。そのキノコを仮称としてドクヤマドリと名付け、1995年に新種報告と共に正式命名されたようだ。

ドクヤマドリは食べられるのか

本種は有毒で本来食用にならないのだが、実は含まれる毒素が熱に弱く水溶性という点がある。これはボレベニンの研究段階で判明している。

以下の記事は2分茹でて実際に食べた人の記録だが…

 blog.goo.ne.jp

記事内ではおよそ100g(キノコ半分)を食べたところ、軽い心拍数の上昇や胃の不快感、めまいが出た程度で症状も数時間で治まった、とのことだ。

通常は一口でも危険なので、以上の内容から判断するとシャグマアミガサタケのように何度も茹でこぼすことで無毒化できる可能性もある。

しかもドクヤマドリは「美味」なのだから、茹でこぼしを繰り返して食べられたら、「ドク」の名に恥じる美味しいキノコの一つになってしまうのだ。

ただ現状は憶測の領域を出ていないので、

 

興味本位で実験は絶対やめとけ

 

…ということだけは伝えておく。

余談

🍄「ヤマドリ」と名が付く通り、元々はヤマドリタケであったが、後に分類の見直しでネオボレトゥス属(Neoboletus)に変更され、そこから更にウラグロニガイグチ属(Sutorius)に変わったようだ。

🍄種小名のvenenatusラテン語で「有毒の」という意味を持つ。

🍄1995年以降も強毒イグチが新たに発見されており、2001年に猛毒のバライロウラベニイロガワリが新種報告されると、2002年にも超猛毒のミカワクロアミアシイグチが報告された。イグチ毒なし神話は…もう…

 

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