キノコの資料をゆっくり見ていってね!

毒キノコ好きの毒キノコ好きによる毒キノコ好きのためのサイト 毒キノコ図鑑……のような何かである

ヒダハタケの毒成分・中毒症状など

最終更新日:2016年11月24日(画像はWikipediaより)

f:id:coruthi:20191122081449j:plain

ヒダハタケ(襞歯茸、学名:Paxillus involutus)とは、イグチ目ヒダハタケ科ヒダハタケ属に属するキノコの一種。名前の通り、特徴的なヒダが和名の由来である。

かつてのヨーロッパでは食用とされており、その当時は生食によって食中毒を起こすことで知られていたが、しっかりと加熱すれば可食と思われていた。

しかし、1944年にドイツの菌類学者がこのキノコを食べて死亡した事をきっかけに、現在では毒キノコとして扱われている。

特徴

夏〜秋にかけて針葉樹林、広葉樹林の地上、その他に切り株や倒木からも発生する。

傘は怪4〜10cmで、初めまんじゅう形、のち漏斗型に開くが、縁は傘が開いても内側に巻いていることが多い。色は灰褐色〜黄褐色でややオリーブ色を帯びており、湿った場所では粘りを持つ。全体的になめらかだが、縁には軟毛がある。

ヒダは淡黄色のち黄土褐色で、柄に対して垂生し、幅が狭く密。柄に近い部分は管孔のように網目状となる。

柄は表面が汚黄色で、上部に網目模様がつく事もある。

ヒダおよび柄は傷つくと褐色に変色する。味は酸味があるが、独特の風味や匂いなどはない。

胞子紋は黄褐色。胞子は楕円形、表面は平滑で、大きさは7.5〜10×4〜6μm程となる

本種の近縁種として同じくヒダハタケ属の「ムクゲヒダハタケ」があるが、これも有毒とされる。

毒成分

溶血性の毒素を含んでいる。

これは単純な毒成分とは異なり、自己免疫疾患によって症状を起こすもので、本種に含まれる抗原が赤血球に対し自己免疫反応を引き起こし、溶血などの症状を起こす。要は一種のアレルギー反応のようなものと考えればよい。

その他にも「ムスカリン」を含んでおり、これは生食による食中毒の原因とも思われる。

フェノール類のインボルチンという成分も含んでいるが、これは本種を傷つけた際に変色する原因物質であって、毒成分ではない。

中毒症状

ある一説では「このキノコを常食していると、二年くらいで死んでしまう」という。

本種の毒性は慢性的なものであり、最初に食べた頃は何ともなかったとしても日々常食することで毒が徐々に蓄積されていき、突然発症することがある。つまり1回食べてトンズラすれば大丈夫

初めは軽症で済んでも、再び食べると以前よりも重い症状が現れ、もう一度食べると更にひどい症状が・・・というように段々と症状が重くなり、やがて死に至る程の重症にまで陥る。

症状に関しては「日本の毒キノコ(フィールドベスト図鑑)」で以下のことが書かれている。

「食後1〜2時間後に腹痛、嘔吐、虚脱、下痢が起こり、ひどい場合には溶血による黄疸、乏尿、腎臓の痛みなど臓器不全で死亡する」

…とのことだが、実際には体質によって症状が異なる。Wikipediaによると「播種性血管内凝固症候群」も引き起こすとも書かれており、重症な場合は急性腎不全、ショック、呼吸困難などに陥るという。

中毒例

ヨーロッパでは生食に近い食習慣が多いからか中毒者が多く、死亡例もいくつか報告されている。特にポーランドでは三大中毒キノコ一つとして有名である。

現在のところ日本国内では中毒例は知られていないが、十分な注意をしてもらいたい。

余談

🍄種小名であるinvolutusは「湾曲した」という意味があり、傘が漏斗型に開ききるまで縁部が内側に巻いていることから来ている。

🍄既に上記で述べたが、本種はハラタケ目ではなくイグチ目。形態からするとベニタケ類やカヤタケなどに近い仲間のように思えるが、実際はイグチ類に近い仲間である。イグチ科の一種であるキヒダタケと比べて見ると、比較的近い形態をしているのが分かるだろう。

🍄同じくヒダハタケ属のキノコは現在のところムクゲヒダハタケ、アカゲヒダハタケ、コヒダハタケなどが存在する。ニワタケ、イチョウタケなどはかつて同属であったが、これらは後にイチョウタケ属に変更された。


毒キノコ図鑑 TOP↓

coruthi.hatenablog.com