キノコの資料をゆっくり見ていってね!

毒キノコ好きの毒キノコ好きによる毒キノコ好きのためのサイト 毒キノコ図鑑……のような何かである

きのこ狩りで注意するべきイグチ科のきのこ(毒菌・不食など)

イグチ科とは真正担子菌綱のイグチ目に属するキノコ。特徴は傘の裏がひだ状ではなく、菅孔(網目やスポンジみたいな感じ)になっている点と、種類にもよるが、柄に網目模様があるのも特徴。

イグチ科のキノコと言えば「ヤマドリタケモドキ」「ポルチーニ」「ハナイグチ」「アミタケ」など、美味な食菌が多く知られており、テングタケ科のように致命的な毒菌も少なく、キノコ狩りの初心者には安全なものとされていた。

かつては「イグチに毒なし」とさえ思われていた時代もあったという。

f:id:coruthi:20191123112333j:plain

世界三大キノコの一つとなっているポルチーニ(画像はWikipediaより)

しかし、ドクヤマドリを初めとしてイグチにもいくつかの毒キノコが知られ、毒はなくとも苦味や辛味があって食べられないもの(不食)が存在し、特にニガイグチ属には注意が必要だ。

イグチだからといってなんでもかんでも口に入れていいというものではないだろう。
今回はそんな毒を持っているイグチ、不食のイグチをまとめて紹介したいと思う。

毒キノコ・中毒例があるもの

毒キノコと言っても強毒クラスと言えるのは一握り、大半は軽い中毒を起こす程度のものや、体質によって下痢を起こすぐらいのものが大半である。

だが一部はテングタケ類など強力な毒キノコが集まるグループにも引けを取らない強い毒を持つイグチも存在するため、注意が必要だ。

ドクヤマドリ

イグチの毒キノコとしてまず初めに名前が挙がるのがこのドクヤマドリ。夏〜秋に、エゾマツやシラビソなどの亜高山帯針葉樹林の地上に発生する。

傘は初めは半球形、のち平らなまんじゅう型。表面は黄褐色でビロード状、のちにわずかにフェルト状になり成熟すると湿時に多少粘性を持つ。

管孔は淡黄色だが、成熟すると黄褐色となる。また、弱い青変性を持つ。

柄は淡黄色で網目模様はない。上下の太さはほぼ同じ、または中央部がやや太い。

名前の通り毒キノコで「イグチに毒菌なし」という神話を崩壊させたキノコでもある。
比較的強い毒を持ち、一本のドクヤマドリを柄だけをスライスして5人で食べたところ、食後4〜5時間後、腹部に強い不快感を抱き、やがて下痢・嘔吐が続き、やがて快方に向かった、とのこと。

しかし、柄に網目模様がないという特徴や、発生する地方が限られている点を考えれば、それほど怖いキノコではないと思う。

チチアワタケ

夏〜秋に、松林などの地上に群生するイグチ。

湿ったところでは傘の表面が粘液に覆われている。この粘液は非常に強い粘性を持っており、洗ってもなかなか取れないという。

また、若い時は管孔から黄白色の乳液を分泌し、これも強い粘性を持つ。

広く食用にされているが、消化が悪く、体質によってはひどい下痢を引き起こすことで知られている。

成熟した個体は特に管孔の部分が消化に良くないとされ、食べるときは取り除くよう注意されたし。

ヌメリイグチ

春〜秋に、マツ林やトウヒ林などの地上に群生するイグチ。

チチアワタケと同様、傘の表面に強い粘性を持つ粘液に覆われる。外見はチチアワタケに似ているが、ツバがある点で容易に区別できる。

美味な食菌の一つとして知られるが、中毒例がある。食べ過ぎないよう注意しよう。

ゴヨウイグチ

夏〜秋に、五針葉マツ、ハイマツなどの樹下に発生するイグチ。

傘は初め半球型のちまんじゅう型。表面初め白色のち黄色〜黄褐色でぬめりがある。
管孔は白色〜淡黄色で淡紅色の液体分泌する。柄には紫褐色〜灰褐色の粒点を持ち、この特徴からシロヌメリイグチとの区別ができる。

美味な食菌で、国内での中毒例はないが、海外では有毒とされている。これは、地域によって変わるキノコの性質ではないかと思われる。

話は変わるが、例として日本ではキシメジ・シモコシという食用キノコがある。
自分の知っている限り、このキノコの中毒例は日本では報告されていないが、海外ではこのキノコによる死亡例が報告され、この影響で今では日本でも毒キノコと認定されてい。

実際のところ日本産の毒キノコに関する研究はあまり進んでおらず、外国の文献で中毒例が報告されているものと同種のキノコを要注意として記載している例も少なくない。

そのため、食用キノコが「日本の毒キノコ(フィールドベスト図鑑)」で毒キノコとして扱われている場合もある。要は同種のキノコでも種類によっては日本産と外国産で毒の有無があるのでは、ということである。

つまり食べても大丈夫ということですね分かります。

キノボリイグチ

夏〜秋に、カラマツ林内の地上、倒木上に発生する。

傘の表面は赤色〜帯褐色で、帯赤灰色〜赤褐色の鱗片に覆われ、非常に強い粘性がある。

柄にはゼラチン質で膜状のツバを持つ。

このゼラチン質のツバを持つイグチは少なく、見分けるのは比較的容易だろう。

中毒例はなく、美味しいキノコのようだが、図鑑によっては何故か毒キノコ扱いなので、ここに載せておく。

キヒダタケ

夏〜秋にシイ、コナラなどの広葉樹林の地上に発生するイグチ。

傘の裏は管孔ではなくヒダ状というイグチでは非常に珍しい特徴を持っている。傘は初めまんじゅう型から後に平らに開き、表面の色は薄い茶色〜赤褐色。

ヒダは柄に長く垂生し、色は黄色でのち黄褐色〜オリーブ褐色となる。

柄はやや細く、上下同大。色は淡黄色〜淡褐色。

ヒダは触れると変色するものあるが、これはイロガワリキヒダタケという別種のキノコである。

体質によっては胃腸系の中毒症状を起こすことで知られる。

キイロイグチ

夏〜秋に、アカマツ・コナラ林などの地上に発生するイグチ。

傘・柄・管孔と、ほぼ全体が黄色に覆われている。強い変色性を持ち、触れると青変性する。

食用になるが、あくまで食べられるというだけの話で味があまりしない上、僅かに苦味を持っている。

さらに、体質によっては胃腸系の中毒を起こすこともあり、安易に手を出すべきではないだろう。

モエギアミアシイグチ

夏〜秋にシイ林・コナラ林などの地上に発生する。

外見はパッと見るとほぼ全体が黒いイグチに見える。

傘の表面は帯紫灰色〜黒色で、管孔は灰白色〜灰色。柄は淡黄緑色で黒色の網目模様がある。

イグチでは珍しく幻覚性の症状を起こすとされるが、国内での中毒例は報告されていない。
このキノコを実際に食べた方の記録によると、幻覚性の症状はなかったとのことだ。

ミカワクロアミアシイグチ

初夏〜夏に、ツバキ科のヒサカキの混じる雑木林の地上に発生する。

長い間モエギアミアシイグチと混同されていたが、柄の網目模様が二重になっているという大きな特徴から別種と判明。

本種はイグチ科では数少ない猛毒キノコの一つで中毒例はないが、「マウスに対して神経性の急性毒性を示し致死作用がある」とのこと。

単離された毒成分はボレチン、イミン化合物など、いずれも新規物である。
イグチ神話は少しずつ崩壊の道を辿っている。

また、現時点で発生が確認されているのは愛知県と三重県など、本州の一部のみ。

ニガイグチ

夏〜秋に、シラビソ、コメツガ、トウヒなどの亜高山帯針葉樹林の地上に発生する。
傘は初め半球型のちまんじゅう型に開く。表面の色は淡褐色から黄褐色。

管孔は初め白のち淡紅紫色となり、傷ついた部分はやや褐色に変化する。

柄は傘とほぼ同色で、中程から上部にかけて網目模様がある。

本種は強い苦味があり、その苦味は只者ではなく、さながら強烈なものだという。

少なくとも口に入れてはならないとだけ言っておく。

ニガイグチ属はニガイグチに限らず、強烈な苦みを持つものがいくつか含まれている。

一応本種からは何故か毒成分のムスカリンが単離されているため、ここでは毒キノコとして紹介している。

まあ、あの苦味じゃ毒があろうが無かろうが意味はないと思うが。

バライロウラベニイロガワリ

夏〜秋に、コメツガやシラビソなどの亜高山帯針葉樹林に発生する。

傘は始め半球形でのち平らに開く。、表面は赤色(幼菌は白色)で、傘の表面は暗褐色の細かい鱗片に被われている。

管孔は黄色だが、孔口は赤色(幼菌の孔口は黄色)。

柄は上部がやや黄色で赤色の網目があるが、網目がないタイプもある。

また、変色性を持ち、肉を傷つけると青色に変色する。

本種はイグチ科でも最も危険な猛毒キノコの一つであり、毒の強さは他の猛毒菌と引けを取らない。

中毒例は二件が知られており、一つは「バライロウラベニイロガワリ中毒記」に書かれている。その記録によると生の肉を僅か一欠けら食べただけで、激しい嘔吐を繰り返したという。

もう一つは北海道で起きたことで、約1/4焼いて食べたところ、3時間程で体の火照り、発熱に加え、激しい嘔吐、下痢などで脱水状態となり、病院に入院し、さらに病院で意識を失い、臨死体験したという。その人の記録によれば「三途の川を見た」とのこと。

アシベニイグチ

夏〜秋に、針葉樹林、広葉樹林の地上に発生するイグチ。

傘はややフェルト状、色は帯緑黄褐色〜淡褐色。

菅孔は黄色〜帯緑黄色で強い変色性を持ち、触れると一瞬で青色する。

柄は上部は黄色で下部は赤色で細かい網目模様がある

イグチ科の中では強い毒性を持ち、食べると腹痛、下痢などの胃腸系の中毒を起こし、ムスカリン中毒を起こす場合もある。

しかし、本種は強い苦味があり、この苦味は加熱しても消えないため、仮に毒がなかったとしても食べられない非常に残念な毒キノコである。

ニセアシベニイグチ

秋〜夏に、アカマツの混じるコナラ林などの地上に群生するイグチ。

傘は赤褐色、やや綿毛状で、管孔は離生〜直生、傷つくと弱く青変する。

そして苦味がないという点があり、「ニセ」という名前が付いている割にはアシベニイグチとそれほど似ていない。

本家アシベニイグチとは違い、美味しいキノコのようだが、体質によっては胃腸系の中毒を起こす場合がある。

しっかりと加熱すれば大丈夫という情報もあるが、定かではない。

オオコゲチャイグチ

夏〜秋に、シイ林やアカマツ混じりのコナラ林などの地上に発生する。

傘から柄かけて全体的こげ茶色になっていおり、管孔は触れると青変するのが特徴。
そして何よりもでかい、とにかくでかい、想像以上にでかい

本種は時に超大型になることもあり、その姿を見れば間違いなく「でかっ!」と声が出てしまうだろう。

毒成分は不明だが、立派な毒キノコの一つであり、いくつか中毒例が報告されている。
また、お酒と一緒に食べると、さらに重い症状が出るという情報があるが、不明な点も多い。

イカタイグチ

夏〜秋にアカマツ、コナラ林などの林内の地上に発生する。

かなり特徴的な外見をしている。一つ一つの特徴を調べるよりも実際に画像を見てもらった方が早いだろう。手抜き乙なんて言わないでほしい

当時は美味な食菌とされていたが、近年中毒例が報告されており、最近の図鑑では毒キノコに分類されている。

ウラグロニガイグチ

夏〜秋コナラやアカマツの混じる雑木林の地上に発生。

傘の表面はこげ茶色〜暗赤褐色で湿ったところではやや粘性を帯びる。

そして最大の特徴として管孔が黒い、特に幼菌は真っ黒である。

柄はほぼ上下同大、表面は灰紫色で暗赤褐色〜暗紫褐色の細かい点に覆われる。

当時の図鑑ではほとんどが食用と書いていたが、場合によって強度の胃腸系の中毒を起こすことがある。現在では毒キノコとして扱われることが多い。

不食(単純に不味いものは除く)

不食とは要するに食用に適しないもの、基本的に天然のキノコは栽培のキノコよりも美味しいと言われるが、実際は種類によってまちまちである。

イグチにも不味いキノコはあるが、それだけなら我慢すれば食べられる。しかし中には超が付くほど苦いもの、そして強烈な程辛いなど、到底食用にできないイグチがある。

ある意味毒キノコ以上に注意するべき存在といえよう

ニガイグチモドキ

夏〜秋に、アカマツやコナラの混じる雑木林の地上に発生する。

傘はオリーブ褐色〜淡紅褐色で、ややビロード状。管孔は白色のち淡紅色、孔口は淡い赤紫色。

柄は傘とほぼ同色で上部に細かい網目模様がある。

このニガイグチモドキは、本家ニガイグチと違って苦味はない・・・という訳ではない。

それどころかニガイグチ属の中でもトップクラスの苦味を持つという。

苦みの成分は水溶性なので、ひとたび味噌汁に入れてしまえば汁、具ともに人間が飲み込むことはほぼ不可能な苦さを持った味噌汁が完成してしまう。

しかし、この苦味は無限ではなく、水にさらすことにより苦みは少し弱くなる。

なので何度も何度も水にさらすことにより、いつかは苦味がなくなり食べられるようになると思われる。

詳しくは「月刊 きのこ人」の「ニガイグチモドキ料理」を参照。

blog.goo.ne.jp

アシボソニガイグチ

夏〜秋に、広葉樹林の地上に発生する。

カサの表面はビロード状、淡黄土色〜黄土色。湿った時は弱い粘性を持ち、触れると焦げ茶色に変色する。

柄は下部が焦茶色〜帯オリーブ焦茶色、上部ほど色は淡くなり、頂部では白色、基部には白い糸束がある。

管孔は柄に対して直生し、初め白色のち灰紅色となる

ニガイグチモドキに匹敵するほど強い苦味を持つとのことなので、注意が必要。

ブドウニガイグチ

夏〜秋に、ブナ科の樹下に発生する。
傘と柄は紫赤褐色(ぶどう色)。管孔は白色のち桃色で変色性を持ち、傷つけると褐色に変色する。

無論、苦い。

他にブドウニガイグチモドキというキノコがあるが、苦味は無いとのこと。

コショウイグチ

夏〜秋に、マツ・モミ・トウヒなどの樹下の地上に発生。

傘は初め半球形のち平らに開く。表面の色は淡黄色〜黄土色で、湿っている時はぬめりを持つ。

管孔は褐色〜赤褐色。柄は上下同大で傘とほぼ同色だが、基部は黄色である。

無毒だが、極めて強い辛みを持っている。

ある方の話によれば調味料化前のブラックペッパーをそのまま食べた時よりも辛いらしい。

料理に辛みを添えるために用いられることもあるらしいが、食用のとしての価値は低いだろう。


以上。イグチの毒キノコといっても大半は体質によって軽い中毒を起こす程度ものである。

ただ、ドクヤマドリ・ミカワクロアミアシイグチ・バライロウラベニイロガワリ、この三つは本当に危険なので注意したい。

不食はニガイグチ属に注意が必要。毒はないとはいえ汁物なんかに入れれば大変だろう。

という訳でなんでもかんでも口に入れてはいけません。