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ホテイシメジの毒成分・中毒症状など

最終更新日:2018年11月20日(画像はWikipediaより)

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ホテイシメジ(布袋湿地、学名:Ampulloclitocybe clavipes)とは、ヌメリガサ科ホテイシメジ属のキノコ。元々はキシメジ科カヤタケ属であったが、のちにキシメジ科はヌメリガサ科に、カヤタケ属は新設されたホテイシメジ属へ独立した。同属のキノコとしてクロホテイシメジ(食毒不明)が存在する。

「ホテイ(布袋)」という名は柄が下に向かって太まるのを七福神の布袋に例えたものだという。

食菌として扱われることが多いが、日本の毒きのこ (フィールドベスト図鑑)では毒キノコとして扱っている事から、本記事もそれに従った。ここでは食用キノコとしてのホテイシメジと、毒キノコとしてのホテイシメジについて紹介する。

特徴

主に秋、様々な林内、特にカラマツなどの針葉樹林に発生することが多く、時に広葉樹林にも発生する。

傘は怪3〜7cm、表面は褐色〜褐灰色で、平滑。幼菌時は饅頭形で、開けばほぼ平らとなり、中央部がややくぼみ、中心が突出する。

ヒダは柄に対して垂生し、やや幅広く疎。色は白〜淡クリーム色となる。

柄は長さ3〜6cm、下に向かって太くなり、表面は傘より淡色で繊維質、中実である。

胞子紋は白色。胞子は楕円形で、大きさは5〜7×3〜4μm程となる。

類似種

よく似たキノコとして、カヤタケ(注)、ドクササコ(猛毒)、クロホテイシメジ、ホテイダマシ(食)などが存在する。

カヤタケはヒダがやや密で、傘の中央が深く窪んだ漏斗形になる点で区別できる。

ドクササコはカヤタケと同様にヒダがやや密で中央が漏斗形になる点や、傘の周縁部がゆるく波打ち、浅い裂け目を生じる点で区別できる。

クロホテイシメジは傘の表面が灰黒色〜帯褐暗灰色で毛羽立つ特徴で判別可能。

ホテイダマシは傘の肉が薄く、柄が細く中空な点で区別できる。本種と違って毒成分を含まないので中毒の心配はない。ホテイダマシはキシメジ科ハイイロシメジ属なので類縁関係は薄いようだ。

食べ方

風味に癖は無く、全体的に淡白な味。しこしこした歯ごたえが特徴で、基本的にどの料理にも合う。

乾燥させて出汁として利用するのも良いだろう。和え物などにしても意外と美味しいのでおススメである。ただし食べ方を誤ってしまうと中毒する。

毒成分

含まれる毒成分は8-オキソ-9-オクタデセン酸などの共役エノン、ジエノン類である。

毒性はコプリンと同じでアルコール摂取によって発症する。アルコール分解の過度で動く酵素の作用を止められ、「アセトアルデヒド」濃度が高くなる。これによって悪酔いを引き起こすのだ。

断酒薬として知られている「アンタビュース」と同じ作用でもあるので、お酒を飲まない人にとっては単なる美味しいキノコである。

中毒症状

お酒と共に食べると、30分〜1時間程でひどい悪酔い状態になってしまう。

具体的には顔・首・胸などの紅潮・火照り、めまい、頭痛、発熱、悪心、嘔吐、動悸、頻脈、痙攣など。重傷な場合は呼吸困難、意識不明に陥ってしまう。症状は数時間ほどで収まり、死に至ることはほぼ無いと思われる。また、お酒の種類によっても症状の強弱が違うという。

この毒性から東北地方では別名:ヨイツブレ(酔いつぶれ)とも言われている。

注意しなければならないのは、ホテイシメジを食べた次の日にお酒を飲んでも中毒するということ。体内の毒素が完全に抜けきるまで一週間程度は禁酒する必要がある。

ホテイシメジの中毒記↓
2007年10月ホテイシメジ中毒で終わった2007年キノコ狩り

余談

🍄同様にお酒と一緒に食べることで発症するキノコはヒトヨタケ、キララタケなどが知られている。症状は本種と同じ悪酔い。ヒトヨタケの毒成分はコプリン、キララタケの悪酔いを起こす原因物質は不明だが、それとは別にインドールアルカロイドを含む。

🍄ホテイシメジは基本的に食菌という扱いだが、一方で同じ毒性を持つヒトヨタケは殆ど毒キノコ扱いである。おそらくホテイシメジの方が風味や食感など、食菌として優れているからだろう。哀れヒトヨタケ…

🍄名前の似たキノコにウラベニホテイシメジ(食)とホテイタケ(可食)というキノコがあるが、いずれも形態、分類ともに異なり、類縁関係は無い。

 
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