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【猛毒】シャグマアミガサタケの毒成分・中毒症状など

最終更新日:2017年8月6日(画像はWikipediaより)

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シャグマアミガサタケ(赭熊網笠茸、学名:Gyromitra esculenta)とは、フクロシトネタケ科シャグマアミガサタケ属に属するキノコ。まるで脳状のような形の頭部が特徴で、秋田では「グニャグニャ」「シワアダマ」などとも呼ばれる。

同じく春に発生するアミガサタケ(食)の名が入っているが、本種との類縁関係は殆ど無く、形態も大きく異なる。

猛毒キノコとして知られているが、フィンランドを初めとして北・東ヨーロッパなどでは珍味として毒抜きを行うことで食べられるという(ただしスペイン・ドイツなどでは一般販売は禁止されている)。

ここでは猛毒・食用としてのシャグマアミガサタケについて紹介する。

特徴

春〜初夏にかけて、マツ、モミ、トガサワラ、トウヒなどの針葉樹林に発生し、日本では北半球温帯以北に分布する。

子実体は頭部と柄に分かれて構成され、大きさは高さ5〜8cm、またはそれ以上になる。

頭部は球状、もしくは不規則形。表面は黄土褐色〜赤褐色で、著しい凹凸やシワがあり脳状である。

柄は太く円柱状で、浅い縦じわがあり、表面は黄褐色〜肌色となる。

内部は空洞で、肉質はもろいが、茹でると弾力がでる。

胞子は子嚢の中で作られ、形は楕円形、表面は平滑となる。

類似種

類似しているキノコはオオシャグマタケ(毒)、ヒグマアミガサタケ(食毒不明)などがある。

オオシャグマタケは外見では見分けがあまり付かないが、胞子の表面に網目模様があり、両端に突起があるので、顕微鏡で観察すれば容易に区別できる。

ヒグマアミガサタケの頭部は浅い凹凸の鞍型になっており、どちらかと言えばノボリリュウタケに近い形状である。

毒成分

含まれる毒成分はヒドラジン類の一種である「ギロミトリン(Gyromitrin、ジロミトリンとも呼ばれる)」および加水分解によって生成するモノメチルヒドラジンの二つを大量に含み、他10種のヒドラジン化合物を含む。

同様のギロミトリンを含んだキノコとして、オオシャグマタケ、微量ながらノボリリュウタケやアミガサタケにも含まれる。

また、モノメチルヒドラジンはロケットの推進剤の燃料としても使われているという。

中毒症状

生のままで食べると7-10時間程で、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、痙攣などの症状を起こす。

重症の場合は肝障害による黄疸、発熱、めまい、血圧低下、肝臓肥大、脳浮腫に伴う意識障害、そして腸・腹膜・胸膜・腎臓・胃・十二指腸など体内のいたるところからの出血を起こし、最悪の場合は2-4日で死に至る。

その症状はアマトキシン類によるものと類似するという。

調理法

上記に述べた通り、毒抜きを行うことで食べることができる。本種の毒成分は水に溶けやすく、2回ほど茹でこぼすことで毒を99%除去することが可能なのだ。ただし安全な調理法で行わなければならない。

大まかな毒抜き法は、


1.大量の水に放り込み5分以上茹でる

2.お湯を捨てる

3.再び大量の水で茹でる

4.お湯を捨てる

5.しばらく水にさらしておく

6.水気を切り調理する。


……以上である。

実際に行う際に注意してもらいたいことがある。

煮沸することにより大量に含まれるギロミトリンが加水分解し、モノメチルヒドラジンという物質になるが、沸点は87.5℃と低い上に揮発性が高く、気化する。つまりは茹でると毒ガスが発生するということ。

この場合、蒸気を吸うだけでも中毒を起こすこともある。肝臓・腎臓・腸・膀胱に障害を与え、僅かながらも発がん性を持つという。

調理中に蒸気吸ってしまい、死亡した例があるので、誤って蒸気を吸わないように注意してもらいたい。

非常に旨味が濃く、歯切れも良いので、シンプルにバターソテー、野菜炒めなどがおススメ。オムレツにしても良い。一方で味噌汁や炊き込みご飯などはあまり合わないようだ。

最後に、できれば風通しのよい広い部屋や屋外などで毒抜きを行うことをお勧めする。

余談

🍄種小名のesculentaには「食用になる」の意味がある。昔から食用にされてきたのだろうか。キノコとは関係が無いが、日本では一般的に食べられる「サトイモ」の種小名は本種と全く同じesculentaである。

🍄ヨーロッパではシャグマアミガサタケの缶詰が販売されている。もちろん既に毒抜き済み・・・と思いきや毒抜きされていないものがあるので、使用する前に缶詰の説明を読まないと最悪命に関わる。それを知らずに中毒を起こした例があるとかないとか……

上記に述べた調理法を行えば問題ないが、そもそも死と隣り合わせにある缶詰があること自体が問題に思える。


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