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オオキヌハダトマヤタケの毒成分・中毒症状など

最終更新日:2023年8月10日

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オオキヌハダトマヤタケ(大絹肌苫屋茸、学名:Inocybe fastigiata)は、ハラタケ目アセタケ科アセタケ属のキノコ。

本種は以前「フウセンタケ科」に分類されていたが、のちに再編が進み、アセタケ属のキノコは「アセタケ科」に変更された。

アセタケ(汗茸)とは食べると大量の汗が吹き出す症状が現れることに由来する。

アセタケ類はほとんど有毒で、いずれも食用にならないと考えてよい。中でも本種は毒性が高く、一部では猛毒キノコとして扱われる。

特徴

夏〜秋にかけて、主にブナ科の樹下に発生、その他にも様々な林内に発生する。

傘は怪2〜6.5cm、初めは円錐状、のち平らに開き、中央が突出する。表面は黄土色で繊維状で成長すると放射状に裂ける。

ヒダは黄褐色、のちオリーブ褐色を帯び、縁は白色で粉状となっている。柄に対して上生〜離生し、やや幅狭く密。

柄は上下同大で中実。表面は白色〜淡黄褐色を帯び繊維状。

胞子は淡褐色で表面は平滑。楕円形〜いんげん豆形で、大きさは8.5〜11.5×5.5〜6.5μm程となる。

近縁種

名前に「オオ」が付かないキヌハダトマヤタケというキノコが存在する。同じく有毒。

本種よりもやや小型だが、大きさは個体差もあるので、

柄の根元が球根状に膨らむ点が肉眼で分かる唯一の違い

一方オオキヌハダトマヤタケは柄の太さが上下ほぼ同じ。確かめるには引っこ抜く必要がある。

毒成分

含まれる毒成分はアルカロイドの一種であるムスカリン(muscarine)目がぁ〜!のアレとは微塵も関係が無いのでご用心

毒キノコの代表ベニテングタケによって初めて単離された毒素だが、その含有量は低く、主にアセタケ類やカヤタケ属の仲間に多く含まれる成分である。

特にオオキヌハダトマヤタケはベニテングタケの100倍以上のムスカリンを含む一説もあるという。

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画像はムスカリンの構造式

ムスカリンは副交感神経にあるアセチルコリン受容体(ムスカリン受容体)に結合し、副交感神経を刺激する。

これによって消化管の運動が促進され、唾液分泌、発汗などの症状を起こしてしまう。

この毒素はクサウラベニタケや一部のイグチ類にも含まれている。

中毒症状

食べると早いときは15分、遅くても数時間ほどで症状が現れる。

ムスカリン中毒の典型的な症状として唾液・汗・涙の分泌増加や、吐き気、嘔吐、下痢などの胃腸系中毒を起こす。

その他にも痙攣、瞳孔の縮小、 眼圧の低下、徐脈(心拍数の減少)、視覚障害、血圧低下などの症状を起こし、

最悪の場合は昏睡、心臓発作、呼吸困難に陥ってしまう。

中毒例は平成元年〜22年にかけて少なくとも6件と16名の中毒者が報告されており、死亡例もあるらしいが、詳細は不明。

また、ムスカリン中毒による解毒剤は副交感神経の動きを抑える「硫酸アトロピン」が効果的とされる。

余談

🍄和名の「トマヤ(苫屋)」とは苫で屋根を葺いた家のことを意味し、見た目からそんな風情を感じられたアセタケ類に、この名称が付けられているようだ。

🍄アセタケは元々、1科1属であったが、ごく最近になって分類が大きく見直された。日本で見られる多くのアセタケ類は本種含めて変わらず「アセタケ属」のままだが、本種に近縁するキヌハダトマヤタケは「イノスペルマ属(Inosperma)」に変わっている。

 

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