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ベニテングタケの毒成分・中毒症状など

最終更新日:2015年7月25(画像はWikipediaより)

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ベニテングタケ(紅天狗茸、学名: Amanita muscaria)とは、ハラタケ目テングタケテングタケ属に属するキノコの一種。

世界的に有名な毒キノコで、ヨーロッパでは幸福のシンボルとして親しまれている。
童話など出てくることもあり、日本でも知名度が高く、毒キノコの代表格と言っても過言ではない。

その派手な外見から猛毒キノコと思われがちだが、実際の毒性はそれほど強くない。

特徴

夏〜秋にかけて、主に針葉樹林や広葉樹林の地上に発生し、特にシラカバなどのカバノキ属の樹下に多く発生する。

傘は赤色で、表面は白色のイボが多数つき、縁にはわずかに条線がある。

ヒダは白色で、柄に対して離生し、幅狭く密。

柄は白色で、表面はささくれ状となる。柄の上部には白色で膜質のツバを持ち、基部は球根状に膨らむ。

食用のタマゴタケに似ているため、注意が必要となる。

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画像はタマゴタケ。毒々しい外見だが、こう見えても無毒。

本種との根本的な違いとしては、傘の表面にイボがなく、傘の縁にハッキリとした条線がある点や、ヒダ、柄が黄色を帯びている点で安易に区別できる。

イボなどは雨によって脱落してしまう場合があるため、イボの有無だけで判断してはならない。傘の表面は一見そっくりだが、全体的に見れば、その違いは明らか。

毒成分

主な毒成分としてイボテン酸、ムッシモール、ムスカリンなどを含む。

アミノ酸の一種であるイボテン酸は、神経系の中毒を起こす毒素だが、これはハエに対しても有効な神経毒であることが知られている。

イボテン酸群のキノコを少々あぶって置いておくと、これをなめたハエはすぐに体が麻痺して動けなくなる。

この性質を利用して、洋の東西を問わず、古くからハエ取りなどに利用されていた。

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画像はイボテン酸の構造式

さらに、このイボテン酸は毒成分でありながらも、非常に強いうま味を持っており、うま味成分として知られるグルタミン酸と比べると、なんと10倍以上のうま味がある

つまりベニテングタケは、かなり美味なキノコという訳だが、うま味成分であると同時に毒成分でもあることを忘れてはならない。

ムッシモールは、イボテン酸が乾燥によって脱炭酸したものである。
非常に不安定な物質であるイボテン酸は、ちょっとしたことで簡単にムッシモールに変わってしまう。
イボテン酸と比べて毒性が強く、より安定性もある。いわばムッシモールはイボテン酸の上位互換のようなものだ。

また、本種は微量ながらもアマトキシン類、溶血性タンパクを含んでいる。

中毒症状

摂取すると30〜90分ほどで吐き気や眠気などに加え、さまざまな症状が現われる。

具体的にどのような症状が出るかと言うと…

胃腸系は腹痛、嘔吐、下痢など、副交感神経系では流涎、発汗、縮瞳など、交感神経系では頻脈、散瞳、心拍数増加、腸閉塞など、中枢神経系では錯乱、運動失調、幻覚、興奮、抑鬱、痙攣などの症状を起こし、ひどいときは混乱、昏睡、呼吸困難などを引き起こす。

幻覚に関しては、とある情報によると、起きていながらも夢を見ているような感じらしい。

中毒症状のオンパレードだが、毒性自体はあまり強くないので、症状は1本食べた程度であれば1日で治り、死ぬことはまずないと思われる。

毒抜き方法

本種の主な毒成分は水溶性で、毒抜きができることも知られている。
毒抜きとはいっても弱まるだけで完全に毒が無くなる訳ではないので、実際に行う場合は自己責任でお願いしたい。

毒抜き法としては二つほど知られ、一つは水にさらすこと。イボテン酸は水溶性なので、軽く茹でて水にさらすだけでも多少の毒は抜けると思われる。
もう一つは塩漬けで、軽く茹でたあと、ビンでもビニールでも何でも良いので大量の塩と一緒に入れ、おおよそ半年から1年ほど保存しておく。

これで一本くらいであれば中毒しない程度に毒性が弱まると思われるが、毒性が弱まるということは同時にうま味も弱まることを意味する。
うま味も一緒に味わいながら食べるとなると、多少のイボテン酸を残しつつも中毒しないように食べる量を調整しなければならない。

実に面倒だが、ここまでするほど美味しいということでもある。


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