最終更新日:2015年12月24日(画像はWikipediaより)
ウスタケ(臼茸、学名:Turbinellus floccosus)とは、ラッパタケ科ウスタケ属に属するキノコ。和名の「臼」とは、餅つきなどに使用される道具のことで、これに似た形態から上記のような名が付けられたと考えられる。
本種に限ったことではないが、ラッパタケ科の多くは傘、柄、ヒダの境界がハッキリしていない。以前はラッパタケ属(Gomphus)に属していたものの、近年になってウスタケ属(Turbinellus)に変更された。
その当時は癖のない風味やシャキシャキとした食感から可食として扱われていたが、のちに毒成分を含むことが明らかになり、現在では毒キノコという扱いが一般的である。
特徴
夏〜秋にかけて、主にモミ、ツガなどの針葉樹林の地上に単生〜群生し、ときに輪生する。中国、ヨーロッパ、北アメリカなどでも発生が確認される。
子実体は高さ10〜15cm、始め細長い円筒形〜角笛状で、のち成長して漏斗形〜ラッパ形になる。
内側は始め鮮朱色〜橙黄色だが、のち成長すると黄土色の地に赤橙色〜橙褐色の鱗片〜斑紋をつけ、中心部は根本まで深く窪んでいる。
外側の表面には脈状のシワがあり、いわゆる「しわひだ」と呼ばれるものである。しわひだは柄に対して根元の近くまで長く垂生し、始め黄白色〜肌色、成熟すると褐色を帯びることがある。
柄はしわひだとの境目は明確ではないが、根本は赤色を帯びる。
胞子粒は黄土色〜淡褐色。胞子は楕円形で、大きさは12.4〜16.8×5.8〜7.3 μm程となる。
類似種
よく似たキノコとして同属のオニウスタケ(注)、フジウスタケ(注)などが上げられる。
オニウスタケはより大型で、内側に大きな鱗片を持つ点で区別できる。
フジウスタケも大型で、本種と比べて鮮やかさに欠けた淡色である特徴から安易に区別できる。
毒成分
単離された毒素はノルカペラチン酸(norcaperatic acid)。胃腸系に作用し、動物実験では中枢神経系の症状を示すことが報告されている。
オニウスタケ、およびアンズタケ(注)にも同様の毒成分が含まれる。
画像はノルカペラチン酸の構造式。
また、エブリコ(Laricifomes officinalis)と呼ばれるキノコには、ノルカペラチン酸とほぼ同じ構造・毒性を持ったアガリシン酸(agaricic acid)という成分を含んでいる。
当時はこれを薬として用いられていたが、副作用が強いことから現在の日本では使われていない。
中毒症状
生食、または加熱不十分で食べると8〜14時間ほどで主に嘔吐、下痢などの胃腸系中毒を起こし、神経系に作用する可能性もある。
ラットに対しては、腹腔内投与することにより自発運動の減少、瞳孔の縮小、流涙、唾液分泌、平滑筋硬直、体の震えなどの症状が確認されている。
毒性自体は弱め。湯でこぼせば殆ど問題ないと言われているが、いまだ議論にある。中毒例はあまり多くないが、注意を要する。
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