最終更新日:2023年6月29日
フクロツルタケ(袋鶴茸、学名:Amanita volvata)は、テングタケ科テングタケ属のキノコ。名前の由来は基部のツボが袋状に大きく膨らむ特徴から来たものである。
かつて食毒不明であったが、1972年の奈良県で、このキノコによると思われる死亡例が報告され、それ以降は猛毒キノコとして扱われている。
このキノコは類似種との分類が非常にややこしいので、本記事ではフクロツルタケ(広義) として扱うことにする。
特徴
夏〜秋にかけて、主にブナ科の樹下に発生する。日本以外では中国、ロシア、北アメリカなどで発生が確認されている。
傘は初め半球形のちほとんど平らに開く。色は白色〜帯褐色で、表面は淡紅褐色で粉状〜くず状の鱗片に覆われる。
ヒダは色は始め白色、成熟すると淡紅褐色となる。柄に対して離生し、密。
柄は傘とほぼ同色で、表面は鱗片〜ささくれ状となっており、白色で膜質のツバを持つが、脱落しやすい。柄の基部には膜質で袋状の大きなツボがある。
傘、ヒダ、柄は変色性を持ち、傷つけると淡紅色に変色する。
シロテングタケに似ているが、ツボの特徴や肉が変色しない点で区別できる。
毒成分・中毒症状
毒性は極めて高く、ドクツルタケやタマゴテングタケにも引けを取らない猛毒キノコである。
その症状はサイトによってはドクツルタケと同様の症状を起こすと表記されるが、「日本の毒きのこ (フィールドベスト図鑑) 」では以下のことが書かれている。
「嘔吐、下痢、言語障害など胃腸系および神経系の中毒を起し、腎臓、肝臓など臓器に障害がでる」
…とのこと。
また、奈良県の中毒例では、食後に手足のしびれ、嘔吐、下痢、黒色尿、呼吸困難、心臓・腎臓・肝臓障害、心臓衰弱、言語障害、顔面麻痺などの症状が記録されている。
これほど強い毒を持ちながらも未だ毒成分は不明のままとなっており、今後の研究が望まれる。
フクロツルタケのクッソ面倒くさい分類
かつてフクロツルタケは一種として分類されてきたが、後に類似種が多く混じていることが分かり、現在ではかなり面倒な事になっている。
大まかには同一種として扱われていた本種はフクロツルタケ、シロウロコツルタケ、アクイロウロコツルタケの3種に分かれたのだが、とある図鑑の影響でさらに面倒なことになってしまう。
「日本のきのこ」(ヤマケイ増補改訂新版)では和名が「シロウロコツルタケ(フクロツルタケ)」と記載されており、「北陸のきのこ図鑑」でもシロウロコツルタケ(旧名 フクロツルタケ)と記載されている。これはいったいどういう事かというと…
元々フクロツルタケは北アメリカで確認されるAmanita volvataと同一種として扱われ、フクロツルタケにも同様の学名が与えられていた。
しかしフクロツルタケとは別に異なる種類として分類されていたシロウロコツルタケ(学名:Amanita cralisquamosa)が研究によりフクロツルタケと同一種の可能性が高いことが分かり、従来フクロツルタケと扱われていた種もAmanita volvataとは別種かも…ということでシロウロコツルタケに改名された。
これは単なる改名ではなく「分類上フクロツルタケはシロウロコツルタケに乗っ取られた」もしくは「君は最初からフクロツルタケじゃないよ(笑)」というレッテルを貼られてもおかしくない仕打ちを受けてしまったのだ。
そうなるとフクロツルタケは何処へ…というも疑問も出てくるが、実際には従来フクロツルタケの学名として与えられた「Amanita volvata」は日本でも確認されている。つまり「真のフクロツルタケ」は確かに日本に存在するのだ。一部ではフクロツルタケ(狭義)とも呼ばれ、フクロツルタケ(広義)もあるが、狭義とは別種かもしれない。
これでフクロツルタケのクッソ面倒な分類は一件落着…なんてことは無く、後に真のフクロツルタケは未知種を含め6種に分かれて存在する事が判明。
その結果、もっと細かく分類分けするとフクロツルタケ(広義)とフクロツルタケ(狭義)+類似の未知種を含めた6種、シロウロコツルタケ、アクイロツルタケになるのだ。
ここまでくると当然ながら肉眼では判別は困難極まりなく、種の同定も非常に難しくなる。とはいえ、これら全て毒キノコの可能性が非常に高いので、基本的に誤食の要因になり得ないのが幸いか。
現在まだ不明な点も多いため、今後の研究次第で更に多くの種に分かれるかもしれない。
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