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【猛毒】シロタマゴテングタケの毒成分・中毒症状など

最終更新日:2016年12月8日(画像はWikipediaより)

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シロタマゴテングタケ(白卵天狗茸、学名:Amanita verna)とは、テングタケテングタケ属に属するキノコの一種。全体が純白で覆われた姿が特徴である。

日本ではドクツルタケタマゴテングタケと並び猛毒キノコ御三家の一角として知られ、ヨーロッパにおいてはタマゴテングタケに続いて最も危険な毒キノコの一つとして恐れられている。

秋田県では「イチコロ」という地方名もあり、国内ではあまり知られていないことだが、本種はドクツルタケと同様「破壊の天使」の異名を持っている。

特徴

夏〜秋にかけて、針葉樹林、広葉樹林の地上など、低地〜高地を問わずに発生する。

傘は初め卵型、のちまんじゅう形から中高の平らに開く。表面は白色で平滑、湿時は粘性を持つ。縁に条線はなく、KOH(水酸化カリウム溶液)を垂らしても変色しない。

ヒダも白色、柄に対して離生し、幅広く密。

柄も白色で、表面は平滑。上部には膜質のツバを持ち、基部には袋状のツボを持つ。

胞子は類球形、大きさは9〜11×7〜9μm程となる。

その形態はタマゴテングタケと比較すると小型、白い点以外では違いはほぼ見られず、タマゴテングタケの白色変種ではないかという見解もなされているが、定かでない。

類似種

よく似たキノコとしてドクツルタケ、シロコタマゴテングタケ(毒?)などが存在し、類縁関係は薄いがシロマツタケモドキ(食)、シロオオハラタケ(不食)なども挙げられる。

ドクツルタケはより大型、柄の表面にササクレがある、KOHを垂らすと黄変するなどの違いが見られる。

シロコタマゴテングタケはコタマゴテングタケ(毒)がほぼ純白になったものである。本種とは非常によく似ているが、ツバの位置やツボの特徴に違いが見られる。

シロマツタケモドキの形態はマツタケの白色版のようなもので、肉質がしっかりしており、判別は容易な方だろうか。

シロオオハラタケは一見すると似ているが草地、芝生、林縁に発生することが多く、傘、柄を傷つけると黄変する点や、ヒダが成長するに従い灰紅色→黒褐色に変わっていくなど、違いが多いので判別はそれほど難しくない。

毒成分

アマトキシン類、ファロトキシン類、溶血性タンパクなどを含む。特にアマトキシン類はテングタケ類を代表する猛毒成分として知られ、熱を通しても分解されない。

ファロトキシン類、溶血性タンパクなどは殆ど中毒の原因になることはないので、実質の毒成分はアマトキシン類のみと考えてよい。

中毒症状

アマトキシン類が主成分なので、タマゴテングタケ、ドクツルタケとほぼ同じ症状を起こす。

具体的に書くと、摂取すると6〜24時間後にコレラ様の激しい腹痛、下痢、嘔吐などの症状を起こすが、1日程度で回復する。

だが、それから数日をかけて肝臓、腎臓の細胞が少しずつ破壊されていき、肝・腎機能障害による黄疸、肝臓肥大などをきたす。最悪の場合は昏睡、呼吸困難または肝不全、腎不全が進行して死に至るという。

このキノコに対する解毒剤は存在せず、治療法は早期の胃洗浄、発症した後の対処は活性炭の投与、および下剤(D-ソルビトール)の投与、十二指腸チューブによる胆汁の吸引除去などだが、深刻な場合は肝移植が必要となる。

やや小型のキノコなので、致死量(本数)はドクツルタケに比べてやや多いと思われる。

中毒例

平成元年〜22年にかけて、少なくとも7件の中毒例、20名の中毒者が報告されており、うち4名が死亡している。

この中毒者数は毒キノコを種別に分けるとテングタケ類では3番目に多い数値であるが、2000年以降からは殆ど中毒例は報告されていない。

余談

🍄本種は今関六也博士の「毒きのこ番付」においては、ドクツルタケとともに「横綱」とされたことから「横綱級の毒きのこ」として紹介されることもある。

🍄種小名の「verna」とは春を意味しており、ヨーロッパでは春にも発生することから来ている。けして春のように穏やかな気持ちで逝けるからという由来ではないのでご注意願いたい。というか上記の症状からして穏やかではない。

🍄本種と同じく白色の猛毒キノコはドクツルタケとその近縁種、フクロツルタケタマシロオニタケ、シロトマヤタケ、国内未記録ではAmanita bisporigeraTrogia venenataなど、意外にも多くの種類が知られている。この事から素人は安易に白いキノコに手を出すことは避けるべきだろう。

🍄本種とは反対色となるクロタマゴテングタケが存在するが、小型種、猛毒菌という本種と同じ特徴を持ち合わせている。「白と黒!二つ合わせてタマゴテングタケ姉妹!」・・・なんてネタは残念ながら特に無いようだ。

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