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コテングタケモドキの毒成分・中毒症状など

最終更新日:2018年10月23日

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テングタケモドキ(小天狗茸擬、学名:Amanita pseudoporphyria) とは、ハラタケ目テングタケテングタケ属に属するキノコの一種。和名に「小」と付くが、実際は大型種である。有毒なので注意を要する。

「モドキ」と名が付いている通り、本家コテングタケ(毒)も存在し、種小名のpseudoは「擬似」「偽の」意味を持つ。発生量は多く、国内ではモドキの方が一般的に見られる。

特徴

夏〜秋にかけて、主にシイ・カシ林、コナラなどの広葉樹林の地上に発生する。日本以外では韓国、中国南部、北インド、タイ、ネパールなどで発生が確認されている。

傘は怪3〜11cm、表面は暗褐色〜灰褐色で、時にかすり模様をあらわし、しばしばツボの膜片が付着し、縁に条線はない。
ヒダは白色で、柄に対して離生し、幅狭く密。縁は粉状となる。
柄は白色で、同色で繊維状の鱗片に覆われ、ささくれ状となっている。柄の上部には白色で崩れやすいツバを持ち、基部には膜質で袋状のツボを持つ。

胞子は卵形〜楕円形、大きさは7.5〜8.5×4.5〜5.5μm程となる。

類似種

よく似たキノコとしてコテングタケ、チャタマゴタケ(食)、Amanita manginiana(食、和名なし)など、食菌から毒菌まで様々なものが存在する

テングタケは針葉樹林に発生。やや小型でツバは崩れにくく、基部のツボが浅いなど、全体的に見れば違いが多い。

チャタマゴタケは幼菌時に類似するが、傘の縁に条線があり、柄が黄色を帯びている点で区別できる。成長した個体であれば間違えることは無いだろう。

A.manginianaは胞子が類球形となっている点で区別できるが、肉眼における判別はほぼ不可能に近い。中国では食用として慕われているが、日本での発生も報告された。

また、近年になってからコテングタケモドキとされていたものは複数の近縁種に混同されていたことが判明しており、A.manginianaもその内の一つにあたる。

毒成分

本種から単離された毒成分は、アミノ酸のアリルグリシン(Allylglycine)、および同様の毒性を示すプロパルギルグリシン(propargylglycine)の二つで、GABA(Y-アミノ酪酸)の生合成を阻害する不飽和アミノ酸である。

GYBAとは、いわゆる「天然アミノ酸」の一つで、動物、植物や人間の体内など自然界に広く分布する。主に人の脳内で抑制系の神経伝達物質として機能し、血圧を低下させたり、ストレスを和らげるなどの働きを持つ。

不飽和アミノ酸であるアリルグリシンは、そのGYBAの生合成に関係するグルタミン酸デカルボキシラ−ゼを阻害する。これによってGABAの濃度を下げてしまい、痙攣を引き起こす原因となる。

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↑アリルグリシンの構造式

これ以外にも4種類の不飽和アミノ酸が単離されている。

中毒症状

食べると30分〜数時間ほどで吐き気、嘔吐、下痢などの胃腸系中毒に加えて、めまい、手足のしびれなどの神経系の症状を起こし、時に痙攣をきたす場合もある。

茨城県では本種による食中毒がいくつか確認されている。また急性腎不全を起こした例もあるが、死亡例は報告されていない。

毒性

本種は猛毒とする説、反対に無毒とする説が存在していた。

猛毒と言われていた理由は、この仲間には猛毒菌が非常に多いことや、動物実験では猛毒とされていたことから来たのだろうか。

一方無毒とされていた理由は、いくつかの試食記において、食べても何も症状が出なかったことから来たものである。これに関しては近縁種のA.manginianaと誤食されていた可能性が高い。A.manginianaは無毒なので、もしこれと間違えていたならば当然ながら中毒はしないだろう。

上記に述べた通り、本種による中毒例が報告されているので、毒キノコであることは間違いない。だが致死性の猛毒成分は単離されておらず、中毒者の情報を見る限りでは、猛毒のテングタケ類に比べると毒性はあまり強くないと考えられる。


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