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【猛毒】ヒメアジロガサの毒成分・中毒症状など

最終更新日:2023年7月30日(画像はWikipediaより)

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ヒメアジロガサ(姫網代傘、学名:Galerina marginata)とは、ヒメノガステル科ケコガサタケ属に分類されるキノコ。

致命的な猛毒キノコの一つで知られ、海外ではdeadly galerina(デッドリー・ガレリーナ)、もしくは秋のガイコツを意味するautumn skullcap(オータム・スカルキャップ)とも呼ばれる。

形態もあまり特徴がないゆえ、ナラタケやセンボンイチメガサなどの食菌と間違えないよう注意を要する。

特徴

秋〜夏にかけて、主に針葉樹林の枯れ木や落ち葉の多い地上に群生する。ヨーロッパ、北アメリカ、日本含むアジア、オーストラリアなど幅広く分布している

傘は小型〜中型で、開くとほぼ平らになる。表面は黄褐色だが、乾燥すると淡色となり、さらに乾燥が進むと全体が淡黄土色となる。また、周辺部にはかすかな条線がある。
ひだは黄褐色で、幅狭く密で縁は白い。
柄は上下同大で、表面は褐色だが、下に行くほど濃色となる。膜質のつばがあるが取れやすい。

胞子は楕円形で小さなイボに覆われており、大きさは8-10 x 5-6µm程となる。

類似種

よく似たキノコは主に、

・センボンイチメガサ(食用)

・ヒメアジロガサモドキ(毒)

コレラタケ(猛毒)

などがある。

センボンイチメガサとは特徴や発生環境などが酷似。柄の下部に上向きのささくれを持つ特徴が本種との違いだが、個体によって肉眼では判別が難しい。正確な同定には顕微鏡で胞子の観察が必須だろう。

ヒメアジロガサモドキは本種と比べて小型だが、大きさも単なる個体差の可能性もあり、近縁種ゆえに肉眼で判別は困難。さらに本種と同じく猛毒の疑いはかなり強い。間違っても口にするべきではないだろう。

コレラタケは柄の特徴に違いがあるが、やはり正確な判別には胞子の検鏡が欠かせない。

毒成分

猛毒のアマトキシン類を含み、タンパク質合成を阻害する環状ペプチドである。熱に強く加熱しても毒素は失われない。

その他ファロトキシンを含むとの情報もあるが、中毒の原因になる毒素ではない。

本種に限らず、ゲコガサタケ属にはアマトキシンを含有する危険な種がいくつか報告されているようだ。

中毒症状

アマトキシンを有するのでドクツルタケコレラタケなどと同様の症状を起こす。

具体的には摂取後10〜24時間程でコレラの様な症状(下痢・腹痛・嘔吐)を引き起こすが、この症状は一時的に収まる。

しかし、数日後に腎臓、肝臓の細胞が破壊され、黄疸や胃腸出血をきたし、最悪の場合は腎不全、肝不全によって死に至る…という症状である。

手遅れになる前に食べたキノコの特定、胃洗浄など早期治療が問われるだろう。

余談

🍄和名の「ヒメ」とは何かの近縁種より小型という意味があり、ドクアジロガサ(コレラタケの旧名)と近縁でやや小さかったことが、和名の由来と思われる。

🍄種小名のmarginataは「縁取りがある」「縁辺のある」などの意味があり、傘周辺のわずかな条線が由来となる。

🍄海外では本種とマジックマッシュルーム(幻覚キノコ)と間違えて食べて死亡した例があるが、日本で幻覚キノコは違法麻薬、そして毒キノコ扱いなので言ってしまえば…

毒キノコと間違えて他の毒キノコを食べるという国内では起きない特殊なケースとも言える。


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