最終更新日:2018年11月21日(画像はwikipediaより)
ヒトヨタケ(一夜茸、学名:Coprinopsis atramentaria)とは、ナヨタケ科ヒトヨタケ属に属するキノコの一種。
毒キノコとして有名だか、他の毒キノコとは異なり、アルコールとともに摂取することにより中毒症状が出るキノコである。
特徴
春〜秋にかけて、草地、畑地、道端、庭園、腐木の周辺などに群生する。
傘は小型〜大型で、初め縁がくぼんだ卵型、のち開いて縁が反転し、放射状に裂けることが多い。表面は灰色〜灰褐色で細かいささくれがあるが、のち失われ平滑となり、溝線をあらわす。
ひだは初め白色で、成熟にしたがい紫褐色を帯び、やがて黒色となる。
柄は白色で中空、下部には不完全な形のツバがある。
突然ながら、ここで問題。
このキノコ、なぜヒトヨタケと呼ばれているのか?それは…
一晩で溶けてしまうから
なぜ溶ける必要があるのか?それは胞子を撒くためである。
成熟した個体は、自己消化により傘の端から黒いインクのように液化する。最終的に柄だけを残し、一夜で溶けてしまう。
このような特徴から「一夜茸」という名が付けられた。
この液体には胞子が含まれており、これを撒いて新しい個体を増やしていく。
食べ方
液化してしまった場合は、もう食べない方が良い。
幼菌は食用になるが、風味がなく、上にも書いた通り、アルコールと一緒に食べてはならない。
毒成分
ヒトヨタケは「コプリン」という毒成分を含んでいる。
正確に言うとコプリン自体が毒という訳ではなく、これが体内で分解されて出てくる「1-アミノシクロプロパノール」が毒の本体である。
この1-アミノシクロプロパノールがアルコールを分解する酵素の作用を阻害し、エタノールの酸化により二日酔いの元となる「アセトアルデヒド」が血中に蓄積してしまう。
これによって悪酔いなどの症状を起こす原因となる。
あまり知られていないが、本種にはコプリンの他に「アンタブス」という成分を含む。
妙に悪意を感じる名前だが、これもお酒と一緒に食べることで悪酔いを起こすものである。お酒に一体なんの恨みがあるというのだ…
中毒症状
具体的な中毒症状は、顔・首・胸などの紅潮、めまい、頭痛、発熱、悪心、嘔吐、動悸、呼吸困難、血圧低下による頻脈、痙攣など。
重傷な場合は昏睡状態に陥るが、毒性はあまり強くなく、症状は数時間ほどで収まる。
ヒトヨタケを食べれば、体内のコプリンが数日ほど残るので、2〜3日ほど経った後でもアルコールを摂取すると中毒症状を起こす場合がある。
一度食べたらコプリンが完全に抜け切るまで、おおよそ一週間程度はお酒を控えた方が良いだろう。
余談
🍄お酒と一緒に食べて症状を起こすキノコは他にもホテイシメジやキララタケなどが知られており、症状はヒトヨタケと同じ悪酔いである。
🍄東方公式漫画の一つである東方鈴奈庵ではお酒を盗む妖怪を捕まえるために「一夜のクシナダ」というヒトヨタケを活用した罠が登場する。これ以外の漫画でもヒトヨタケが登場する話がしばしば存在する。
🍄漫画家である松本零士が押入れにしまっていたパンツに生えたキノコを、「さるまたけ」と名づけ、同じ漫画家のちばてつやに食べさせたというエピソードがあるが、そのキノコはヒトヨタケの仲間である可能性が非常に高いという。この話はテレビでも紹介され話題になった。
🍄ササクレヒトヨタケというキノコもあるが、こちらはコプリンを含まず、お酒と一緒に食べても問題ない。美味な食菌として知られ、最近では人工栽培もされているという。「ヒトヨタケ」と名前が付くものの、このキノコはハラタケ科ササクレヒトヨタケ属なので、ヒトヨタケとは分類が異なる。
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