キノコの資料をゆっくり見ていってね!

毒キノコ好きの毒キノコ好きによる毒キノコ好きのためのサイト 毒キノコ図鑑……のような何かである

ツキヨタケの毒成分・中毒症状・見分け方など

最終更新日:2016年9月1日

f:id:coruthi:20191121171632j:plain

ツキヨタケ(月夜茸、学名:Omphalotus japonicus)とは、 ホウライタケ科ツキヨタケ属に属するキノコの一種。毒キノコとして有名。

日本国内において最も中毒例の多い毒キノコとして知られ、秋になると毎年のように(悪い意味で)話題になる。

本種はクサウラベニタケカキシメジと並び「誤食キノコ御三家」の一つとしても知られ、これら三つが国内におけるキノコ中毒例の大半を占める。海外では「極東の鬼火」、「狐火」などと呼ばれている。

特徴

初夏〜秋にかけて主にブナなどの広葉樹や枯木などに重なって発生する。

傘は半円形〜腎臓形、偏心生だが、まれに中心生の個体も見られる。表面は初め黄褐色で小さな鱗片があり、のち成熟すると紫褐色〜暗褐色を帯び、光沢を表す。

ヒダは白色〜淡黄色で、柄に対して垂生し、幅広く疎。暗所ではわずかな発光性を持つ。

柄は太く短く、ヒダと柄の境目には不完全なツバがある。表面は淡黄褐色で、横に裂くと付け根の部分に黒紫色〜淡褐色のシミがある。

肉は白色で柔らかく、特別な味や臭いはない。

胞子は類球形、表面は平滑で、大きさ11.5〜15μm程となる。

毒成分

主な毒成分はセスキテルペンに属するイルジン類(イルジンS、イルジンM、及び細胞毒であるネオイルジンA、Bなど)とされるが、他にも毒成分がある可能性があるため、研究途上にある。

あまり知られていないことだが、イルジン類は癌細胞に対して細胞毒性を示すことから抗癌剤として期待されたが、正常細胞に対しても強い毒性を示すため、結局薬にはならなかった。

中毒症状

摂取すると30分〜3時間後に腹痛、下痢、嘔吐などの症状が現れ、重症な場合は痙攣、脱水症状やアシドーシスショック起こす事もあり、稀に見るもの全てが青く染まる幻覚症状があるという。

死亡例もあるが、毒性自体はそれほど高くない。

中毒例

中毒件数は平成元年から22年にかけて、少なくとも393件と1719名の中毒者が出ており、日本におけるキノコ中毒の約3分の1を埋める数値である。

そのうち死者は2名。つまり、少なくともこのデータでの死亡率は1%未満ということになる。

なぜこれほどまでに本種の食中毒が多いのか、原因としては、一見すると全体的に色や形が地味で毒キノコのようには見えないこと。一か所に多く発生するので、大量に採れてしまうこと。シイタケ、ヒラタケ、ムキタケなどの優秀な食菌によく似ていることが挙げられる。

本種の食中毒を避けるにはどうすれば良いのか、やはりお店で買うのが最も安全……のはずなのだが、滋賀県の道の駅でなんとヒラタケと間違えてツキヨタケが販売されるという、とんでもない事例がある。

ツキヨタケの類似種・見分け方など

シイタケ、ヒラタケ、ムキタケの三つと見分けるのはキノコ狩りにおいて重要である。

ヒラタケは表面が灰色っぽい、ムキタケは表皮は剥がれやすいなど、それぞれ異なる特徴があるので、十分な知識を持っていれば判別は容易だが、初心者は特に注意が必要だ。

だが初心者でも容易に見分ける方法がある。ツキヨタケの柄を縦に裂いでみると……

f:id:coruthi:20191121171808j:plain

付け根の部分に黒いシミがあるのがお分かりだろうか。

これはツキヨタケの特徴の一つで、他の類似種には存在しない特徴である。このシミが確認できればツキヨタケと判断して違いない。

個体によっては稀にシミが殆ど見当たらない、あるいは無いことがあるので注意が必要となる。

発光

ツキヨタケは発光するキノコとしても有名で、新鮮ものであれば暗所でヒダがうっすらと光る。

この発光性で見分けられるのでは?と思うかもしれないが、光はごく僅かで、肉眼では殆ど確認できない上、熟成が進むと発光しない場合もある。

f:id:coruthi:20191121171851j:plain

この発光性はツキヨタケに含まれる「ランプテロフラビン」によるものと分かっている。

発光するキノコはツキヨタケだけではなく、世界で約50種類が確認されている。日本ではヤコウタケシイノトモシビタケがあり、これらは肉眼でもハッキリと光が確認できる。

現在のところ発光する生物で毒を持つのはツキヨタケと海外で見られる近縁種のみが確認されている。


また、ツキヨタケは今昔物語にも登場している。「金峯山の別当毒茸を食いて酔わざる語」をご存じだろうか。ヒラタケと偽ってツキヨタケ金峰山別当をしていた老僧を毒殺しようとする話であるが、老僧は特異体質のために中毒せず、毒殺は失敗に終わっている。

この話を見ると日本では古くから毒キノコとして知られていたことが窺えるだろう。


毒キノコ図鑑 TOP↓

coruthi.hatenablog.com