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カキシメジの毒成分・中毒症状など

最終更新日:2022年9月2日(画像はWikipediaより)

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カキシメジ(柿占地、学名:Tricholoma ustale)とは、ハラタケ目キシメジ科キシメジ属に属するキノコの一種。

一見すると美味しそうなキノコであるが、有毒として知られ、「毒キノコは毒々しい色をしている」というありがちな迷信をものの見事に打ち砕いている。

毒キノコらしからぬ地味な形態からか、他の食菌と間違え誤食される例が多い。本種による中毒例はキノコ全体では3番目に多く、ツキヨタケクサウラベニタケと並び、三大誤食キノコの一つとして知られる。

特徴

主に秋、広葉樹林やマツなど針葉樹林の地上に発生する。

傘は怪3〜8cm、初め半球型で、のちまんじゅう形から平らに開く。表面は栗褐色〜赤褐色〜薄い黄褐色で、湿気の強い場所ではヌメリがあり、乾燥している場所では光沢を持つ。

ヒダは柄に対して湾生し、幅が狭く密。初め白色だが、古くなると赤褐色のシミができる。

柄は上下同大、または下部がやや膨らみ、上部は白色、下部はうすい赤褐色を帯びる。

胞子は広卵形で、大きさは5.5〜6.5×3.5〜4.5μm程となる

よく似た食用キノコ

よく似た食菌として、チャナメツムタケやニセアブラシメジなどが挙げられる。

これらの特徴や見分け方を紹介していきたい。

チャナメツムタケ

カキシメジと間違えやすいキノコの一つ。傘の表面にシイタケのような鱗片があり、柄の下部にささくれがある点で区別できる。カキシメジのすぐ隣に発生することもあるという。

ニセアブラシメジ

これも良く似るが、本種は通称「クリフウセンタケ」と呼ばれ実際にはシメジとは縁の離れたフウセンタケ属のキノコである。

クリフウセンタケを含めた多くのフウセンタケ属には柄の上部にクモの巣膜のツバ、あるいはその名残があり、この特徴から容易に区別が可能。

また、群馬地方ではクリフウセンタケを地方名として「カキシメジ」とも呼ぶことがあり、一部のスーパーでは本種をこの名称で販売することも。

一般的にはカキシメジ=毒キノコなので非常に紛らわしいが、カキシメジという呼び名にとらわれない配慮も大事である。

その他の近縁種

食菌の他にも素人には殆ど見分けがつかないような近縁種が数多く存在する。

主にオオカキシメジ、アザシメジ、ニガシメジ、オオニガシメジなどだが、これらの特徴を一つ一つ記載しておく。

オオカキシメジ

主に秋、針葉樹林内に発生する。傘の中央部付近に黒色を帯びた小鱗片があり、ヒダは古くなったり傷ついたりすることで茶褐色のシミができるなどの特徴でカキシメジと区別できる。ただしカキシメジと同じく毒キノコなのでご注意。

アザシメジ

広葉樹林に発生する。傘は帯橙褐色で湿時に粘性があり、成長すると表皮が裂けて鱗片となる。柄は白色のち傘と同色に変わっていき、表面は細かい繊維状の鱗片におおわれている。傷つけるとその個所にゆっくりとアザが生じる特徴があり、これが和名の由来かと思われる

ニガシメジ

本種は別名「カキシメジモドキ」とも呼ばれる。秋、広葉樹林内に発生し、一見カキシメジそっくりだが、特徴として傘周辺に淡く短い溝条がある。湿時非常に強いぬめりがある。強烈な苦味を持つ点などで区別できる。

オオニガシメジ

広葉樹林に発生する。傘は殆どぬめらず、淡黄褐色で若い個体は周辺部が内側に強く巻き込む。柄は太く短く。傘とほぼ同色。頂部に綿毛状の細かい鱗片がある。ニガシメジと同様、非常に苦い。

その他にもアカカキシメジ、セイタカカキシメジ、ドクカキシメジ、ニセカキシメジなど、いくつか近縁種が存在するが、詳細は不明。

カキシメジとマツシメジの関係性

上記に述べた近縁種の他にも「マツシメジ」というキノコがあるが、カキシメジとは切っても切れない縁にある。

一言にマツシメジと言ってもカキシメジの地方名としての「マツシメジ」、松林に発生するカキシメジの通称としての「マツシメジ」、カキシメジとは明確に異なる種類として存在する「マツシメジ」など複数の意味があるので、それぞれ紹介していきたい。

地方名としての「マツシメジ」

標準和名の他にもキノコは種類ごとに数多くの地方名があり、カキシメジも例外ではない。

地方名はオショウモタシ(東北地方)、カキモタセ(新潟)、コノハシメジ(青森、秋田)などがあり、マツシメジはその地方名の一つにあたる。

松林型カキシメジの通称としての「マツシメジ」

嘘か誠か、松林に生えるカキシメジは無毒と言われている。

松林に出てくることから通称「マツシメジ」とも呼ばれるが、紛らわしくならないようここでは名称を「松林型カキシメジ」とする。

松林型カキシメジは普通のカキシメジ(広義)と比べると全体的にぎっしりしており、苦味があるのが特徴だが、地域の違いによる個体差か、あるいは別種か、現在のところなぜ無毒なのかは明らかになっていない。

九州地方ではカキシメジの一部をマツシメジとして昔から食べる習慣があると言われるが、このマツシメジは松林型カキシメジの事ではないかと思われる

カキシメジと異なる種としての「マツシメジ」

地方名や松林型とは違い明確にカキシメジと異なる種、

つまり正真正銘のマツシメジ(学名:Tricholoma albobrunneum)が存在する。

こちらはあまり知られておらず、松林型と違いマツシメジを食用とする記述はほぼ無い。例によってカキシメジに類似するので、特徴もここに述べておく。

マツシメジの特徴

主に秋、トドマツ林などの針葉樹林に発生。主な分布地は北海道。

傘は帯赤褐色で表面は繊維状となり、湿時にやや粘性がある。柄は中実で根もとがやや膨らみ、上部は白色、下部は赤褐色でカキシメジと比べると境界がはっきりしており、見分ける重要なポイントとなる。

似ても焼いても消えないほこり臭さがあり、おそらく食不適。

この他にも「キヒダマツシメジ」というキノコがあるが、ヒダがレモン色を帯びている点でカキシメジやマツシメジとは比較的容易に区別できる。

毒成分

カキシメジにはウスタリン酸という毒成分が含まれている。マウスに対し経口投与すると自発運動の低下、異常な体のふるえが現れ、量が増えると致死性も示す。水溶性の毒成分なので、ゆで汁を飲んでも中毒する場合がある。

他にも青酸を生産する能力があるが、かぎりなく0に近いほどの微量であるため、あまり気にする必要はないだろう。

中毒症状

食べると30分〜3時間ほどで頭痛を伴った嘔吐、腹痛、下痢などの症状を起こしてしまう。

毒性はあまり強くないからか、死亡例は現在のところ報告されていない。

中毒例

中毒例は平成元年〜22年にかけて、少なくとも84件、中毒者は347名が記録されており、これ以降もいくつか食中毒が報告されている。

2019年11月には石川県小松市の「JAあぐり」ではカキシメジを「マツシメジ」と表示して3年に渡り販売し、これを食べて食中毒を起こした例がある。

このマツシメジというのはおそらく、無毒とされる松林型カキシメジの事を指していると思われ、3年間販売していたにも関わらずこの騒動が来るまで一切食中毒が無かった点から考えると、松林型カキシメジではなく毒性を持つ普通のカキシメジ採取してしまい中毒者が現れた、とも捉えられる。

2021年9月28日には群馬県の天然キノコ料理を提供する旅館で食用のチャナメツムタケをカキシメジと間違えて採取し、カキシメジ混じりの水団を食べた30~70代の男性9人が中毒。

下痢や嘔吐、腹痛などの症状を起こし、やがて全員快方に向かったが、同旅館は3日間の営業停止処分を余儀なくされた。

余談

🍄青酸を産生する能力はカキシメジ特有ではなく、一般的に食べられているマイタケやエリンギ、その他のヒラタケ類の仲間にも含まれる。青酸とは言っても正式にはシアン化水素というもので、いわゆる「青酸カリ」がそのまま含まれている訳ではない。青酸カリが気体になったものと考えれば分かりやすいだろう。

キノコに青酸が含まれると危険に思うかもしれないが、その量は致死量の1000分の1未満しかないので、一度に相当な量を食べるか、生で食べない限りは大丈夫…というかそこまでしたら青酸関係なく中毒する可能性の方がはるかに高い。

🍄カキシメジの毒成分は水溶性なので、水に漬ける、茹で溢し、塩漬けなどをすると毒が抜けて食べられる…とも言われるが、塩蔵したにもかかわらず中毒した記録もあるため、正直なところおすすめはしない。そもそも野生のキノコに手を出すこと自体が(ry

 

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