最終更新日:2023年8月1日(画像はWikipediaより)
イッポンシメジ(一本占地、学名:Entoloma sinuatum)とは、ハラタケ目イッポンシメジ科イッポンシメジ属のキノコ。イッポンシメジという和名は一本ずつ発生するのが多かったから、というのが由来とされる。
毒キノコとして有名で、有毒のクサウラベニタケとともに食用のウラベニホテイシメジと混同される。
特に中毒者の多いヨーロッパでは「裏切り者」「キノコ好きの下剤」などと呼ばれるという。
特徴
主に秋、広葉樹林の地上に単生〜散生する。
傘は中型〜大型で、初め不規則なまんじゅう型、のち中高の平らに開く。傘はやや粘性を持ち、縁が反り返り大きく波打つことがある。傘の色はうすい灰色を帯びた黄土色で、表面は白っぽい。
ヒダは初め白色、のち成熟すると薄紅色~肉色となる。柄に対して上生〜直生し、やや幅狭く密。
柄は白色、表面は繊維状で、縦に裂けやすい。
味は特に苦味や辛味はなく、小麦粉のような不快臭がするという。
類似種
よく似たキノコは主に、
・ホンシメジ(食)
・ウラベニホテイシメジ(食)
・クサウラベニタケ(毒)
などがある。
ホンシメジは傘が淡い灰褐色、縁が内側に巻いている、ひだが白色~淡いクリーム色で薄紅色にならない点で区別できる。
ウラベニホテイシメジはヒダが薄紅色になる特徴が酷似するが、柄が太くて硬く、傘の表面は指で押したようなかすり模様あり、生では齧ると苦味を持つ点で区別できる。
クサウラベニタケは個体差があるが、本種と比べて柄が細く、中空で崩れやすい。
毒性
摂取すると30分〜2時間ほどで下痢、嘔吐、頭痛などの症状が現れ、重症な場合は脱水状態に陥ってしまう。
ごく稀だが患者の中には、せん妄や後遺症として数カ月続くうつ病などの精神障害が海外で報告される。
ヨーロッパでは全キノコ中毒の10%を埋めるとされ、ハイイロシメジと間違えて誤食されるケースが後を絶たない。
日本での中毒例は平成元年〜22年にかけて、少なくとも19件と69名の患者が記録されている。
致命的な毒性ではないが、海外では死亡例があり注意を要する。
地方名
一部地域では本種以外のキノコが地方名として「イッポンシメジ」と呼ばれることがある。主な例としては…
食用のウラベニホテイシメジが茨城県で通称「イッポンシメジ」と呼ばれる。
少数派だが、クサウラベニタケも長野県や岩手県などで「イッポンシメジ」と呼ばれることもあるという。
そのため、別の地方の方々とキノコ狩りをする場合、
A「イッポンシメジだ。毒があるから食べないほうがいいよ」
B「え?イッポンシメジは食べられるって聞いたことあるけど?」
C「ちょっとまって、イッポンシメジは毒だし、これはイッポンシメジじゃないよ」
…といった具合に、会話が成立しない場合もある。
何ともややこしいが、このような呼び名にとらわれない配慮も必要である。
余談
🍄種小名のsinuatumはラテン語で「曲がっている」の意味を持ち、傘の縁が反り返り波打つ特徴が由来となる。
🍄イッポンシメジと同様、毒キノコの名称が食用キノコの地方名として呼ばれるケースとして、クリフウセンタケを「カキシメジ」と呼ぶ地域がある。
カキシメジという名前で天然キノコが販売される光景を目の当たりにしても、おそらく毒キノコではないので柔軟な思考でいこう。
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