最終更新日:2023年8月24日(画像はWikipediaより)
クサウラベニタケ(臭裏紅茸、学名:Entoloma rhodopolium)とは、ハラタケ目イッポンシメジ科イッポンシメジ属に分類されるキノコの一種。
毒キノコとして有名でツキヨタケやカキシメジと並び「三大誤食キノコ」の一つで知られる。本種には良く似た食菌が多く、日本国内では他の食菌と間違え中毒するケースが後を絶たない。
毒キノコらしからぬ地味な形態はもちろん、地域や発生環境によって個体差が非常に激しいのも特徴の一つで、たとえベテランでも完全に見極めることはできない。同定の難しさから日本では「名人泣かせ」の異名を持っている。
※このキノコは近年、分類の見直しで複雑に種類が分かれたが、本記事では学名、特徴、含有成分、中毒症状、食中毒に関する情報は従来通りの「クサウラベニタケ」として扱うことにする。
特徴
夏〜秋にかけて、ブナ、コナラなど広葉樹林やマツが混じる林内の地上に群生する。
傘は怪3〜8cm、初め鐘形で、のちほぼ平ら〜中高の平らに開く。表面は灰色〜黄土色、傘には吸水性があり、湿っているときはヌメリがあるが、乾くと絹糸のような光沢があらわれる。
ヒダは柄に対して上生〜湾生し、やや幅が狭く密。色は始め白色だが、古くなると紅色を帯びる。
柄は白色で、傘と同様に絹糸のような光沢があり、中空でくずれやすい。
肉は白色で、特に辛味や苦味はないが、なんとも嫌な臭いがあり、表現するならば小麦粉を青臭くしたような感じである。
胞子は五角形〜六角形で、大きさは8〜10.5×7〜8μm程となる。
毒成分
毒成分は溶血性タンパク、コリン、ムスカリン、ムスカリジンなどを含む。
ムスカリンは副交感神経を興奮させることで縮瞳、発汗などを示す毒素である。コリン、ムスカリジンは詳しい情報がないが、消化系に作用すると言われる。
溶血性タンパクはその名の通り、溶血を起こすタンパク質で、一般的に食べられるヒラタケやエノキタケにも含まれる。
これはタンパク質が持つ「酸素」が内蔵の粘膜を傷つけ、溶血作用により下痢を引き起こすものだが、十分に加熱すれば酸素は動かなくなる。
要は下痢を起こす原因物質と考えればよい。
中毒症状
摂取すると10分〜数時間ほどで腹痛、下痢、嘔吐などの胃腸系中毒を起こし、
ひどい時はムスカリン中毒の症状(発汗、流涙、流涎、痙攣、瞳孔の縮小、徐脈、視覚障害、血圧低下。最悪の場合は心臓発作、呼吸困難など)を引き起こし、死に至る場合もある。
毒性はそれほど高くなく、胃腸系の症状で済むのが大半で、ムスカリン中毒が出ることも少ない。
死亡例もあるらしいが、詳細は不明。
中毒例
中毒例は平成元年〜22年にかけて、少なくとも258件が報告され、1041名の患者が記録されている。これは日本におけるキノコ中毒では2番目に多い数値である(最も多いのはツキヨタケ)。
本種に限った話ではないが、他の食菌と間違えて販売されるという事件もある。
2016年9月下旬には、岡山県の道の駅で本種をハタケシメジとして販売され、これを鍋にして食べた夫婦が食中毒を起こした。過去にはウラベニホテイシメジに混じって販売されたケースもあるという。
また、同様に有毒のイッポンシメジというキノコがあるが、
類似種ゆえに「中毒したキノコがクサウラベニタケではなくイッポンシメジの方だった」という例もしばしば発生する。どっちも毒なので知ったところで意味ない定期
見分け方
よく似た食用キノコとして
・ホンシメジ
・ウラベニホテイシメジ
などがあり、これらの特徴や見分け方などを述べていく
ウラベニホテイシメジは柄が太く丈夫で、特に傘の表面に指で押したようなかすり模様は明確な特徴の違いとなる。生では苦味を持つ特徴もあり、クサウラベニタケには苦味がないので一度齧って判断するのも良いだろう。
ただし同じイッポンシメジ科ゆえ、同様にヒダが紅色になる特徴を持つので注意。分からないときは手を出さないのが無難だろう。
ハタケシメジ、ホンシメジはヒダが基本的に白色〜クリーム色で紅くならない点で区別できる。
その他の類似種・分類の見直し
クサウラベニタケは従来から非常に個体差が激しい種類とされてきた。
色や大きさ、柄の太さなど、本来の特徴に当てはまらない個体が多く見つかっており、こうした問題について、
「複数の種が混在しているのでは?」
という指摘が以前からあった。
それから徐々に研究も進み、意外な事実が明らかとなる。
本種は元々ヨーロッパ産の「Entoloma rhodopolium」と同種としてこの学名が用いられていたが、近年の研究で日本産のクサウラベニタケはE.rhodopoliumと異なる種と判明。
それも複数種に混同されてたため、
・コガタクサウラベニタケ
・クサウラベニタケモドキ
・ニセクサウラベニタケ
以上の3種に分かれた。このうちコガタクサウラベニタケ以外は少なくとも有毒と判明している。本家クサウラベニタケは何処へ…
その他いくつか類似種が存在し、大まかに述べると、
同様に有毒の「コクサウラベニタケ」に加えて、詳細不明の種として「ニセイッポンシメジ(仮称)」「アシナガイッポンシメジ(仮称)」「ハイイロクサウラベニタケ(仮称)」「ヒメクサウラベニタケ(仮称)」「シミイッポンシメジ(仮称)」「ニセシメジ(仮称)」「ノトウラベニシメジ(仮称)」「タカネイッポンシメジ(仮称)」「オキナウラベニタケ(仮称)」など。なぜ読み飛ばしたし
……ともあれ一言でまとめると、
「全部毒だから食べるな!」くらいの認識で問題ないだろう。
また、他にも未知の近縁種が隠れている可能性も否定できない。
余談
🍄和名の由来は本種の特徴そのものから来ている。「クサ」は不快臭から、「ウラベニ」は紅色になるヒダから。これらの特徴を合わせて「クサウラベニタケ」と命名された。
🍄名前のよく似た「ワカクサウラベニタケ」というキノコがあるが、外見は特に似ておらず、そもそも臭(クサ)ではなく若草(ワカクサ)で鮮やかな緑色が特徴のキノコ。似てないのは必然的なのだ。これぞ余談
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