最終更新日:2023年8月29日
ヘビキノコモドキ (蛇茸擬、学名:Amanita spissacea)とは、テングタケ科テングタケ属に分類されるキノコの一種。和名は蛇模様を連想することから名づけられたと思われる。
テングタケ類の中では日本で広く見られるキノコの一つだが、強力な毒性を持ち、死亡例もあるという。
特徴
夏〜秋にかけて、アカマツ・コナラ林やシイ・カシ林などの地上に発生する。主に東アジアに分布している。
中型〜大型で傘はやや繊維状、表面は帯灰褐色〜暗灰褐色で黒褐色のイボが散在する。縁に条線はない。
ヒダは白色で、柄に対して離生〜垂生し、幅狭く密。縁は粉状となる。
柄は灰色〜灰褐色で繊維状小鱗片に覆われ、ツバより下はだんだら模様。上部のツバは灰白色で膜質。柄の根元は球根状に膨らみ、表面は黒褐色の破片が傘の表面似のイボとなって環状に付着する。
キリンタケ(学名:Amanita excelsa、別名:ヘビキノコ)と外見が似ているが、ヘビキノコモドキに比べて柄が白い点や、傘のイボの色や形などで区別できる。
毒成分
毒成分はアマトキシン類、溶血性タンパク質などを含む。
アマトキシン類は内臓細胞に障害を起こす猛毒成分として知られ、加熱によって分解することもできない。
溶血性タンパク質はその名の通り溶血を引き起こすタンパク質である。
その他、精神症状が報告されていることから、イボテン酸または未知の幻覚物質を含む可能性がある。
中毒症状
食べると吐き気、めまい、足腰の痛み、などの症状が起こし、せん妄、幻覚などの精神障害も現れるという。
時に昏睡状態に陥り、ひどい場合は死に至る。
また、毒成分としてアマトキシンを有し、致命的な症状を起こす可能性が高い。
日本では中毒例はほぼ見られないが、中国では2004年~2011年にかけて食中毒が少なくとも16件報告され、5名の死者が出ている。
毒性はかなり高いと思われ、注意を要する。
近縁種
形態的には似ているが、今のところ正式名のない「ヘビキノコモドキ近縁種」が存在する。
特徴としては、傘の表面は灰褐色〜褐色で、灰色の鎌状に尖ったイボを着ける。
ヒダは白色で柄に対して離生し、幅狭く密。
柄はほぼ円柱状で基部はふくらみ、上部には膜質で白色〜灰白色のツバがある。ツバより下は灰褐色で繊維状の細い鱗片に覆われ、時にだんだら模様をあらわす。基部はツボの破片をつける。
食毒不明だが、本種と同様に有毒と考えたほうが良い。
なお、このキノコは旧版「山渓カラー名鑑 日本のきのこ」ではキリンタケとして掲載していたが、写真のキノコが誤認だったとして、
新装版では写真は旧版そのままに「ヘビキノコモドキ近縁種(Amanita sp(種小名なし)」として掲載された。
一方キリンタケは項目削除されたが、近縁種の掲載文から見ると存在が否定された訳ではないだろう。
…と思いきや「日本産きのこ目録2020」ではヘビキノコモドキ近縁種にキリンタケと同じ学名「Amanita excelsa」が適用されている。
そう、キリンタケの存在自体が近年あやふやになっているのだ。これに関しては分類が適切に見直されるのを待つ他ないだろう。
余談
🍄ヘビキノコモドキの種小名「spissacea」は「厚い」を意味する。傘が厚く見えたのだろうか。いうほど厚くないなんて言わない。
🍄近縁と思わしき種として「ニセヘビキノコモドキ」というのがあるが、何も知らない一般人からすれば、もはや「ヘビ」なのか「キノコ」なのか、それ以前に「ニセ」だの「モドキ」だの単語が前後にあって色々面倒な名前になっている。
毒キノコ図鑑 TOP↓