最終更新日:2023年7月20日
ドクキツネノカラカサ(毒狐唐傘、学名:Lepiota helveola)は、ハラタケ目ハラタケ科キツネノカラカサ属のキノコ。属名「Lepiota」はギリシャ語で鱗片の意味を持ち、傘に覆われた鱗片が特徴となる。
あまり馴染みのないキノコだが、シンプルにキツネノカラカサ(可食)の有毒版といったらイメージしやすいだろう。
本種はクリイロカラカサタケと同様、キツネノカラカサ属に分類する猛毒キノコの一つとしても知られる。
特徴
夏〜秋にかけて雑木林や林緑などの地上に発生する。主にヨーロッパで比較的広く見られ、北アメリカや東南アジアの一部でも発見されているが、日本では未記録。
傘は小型〜中型で平らな山型〜中央がやや高い山型で、のち中高の平らに開く。表面の表皮は赤紫褐色〜赤褐色で、成長するにつれて細かくひび割れ、白色の地の上に片鱗となって散在する。片鱗は中央に多く付着しており、ほぼ同心円状となって覆われる。
また、幼菌では傘の表面はほぼ全体が鱗片で覆われる。
ヒダは白色で、柄に対して離生し、幅が狭く密。
柄には白色で膜質のツバがあるが、消失しやすい。ツバから上は白色、ツバから下は淡紫褐色の菌糸状の鱗片がまだらになって付着している。
胞子は長楕円形で、大きさは8〜10×4.5〜5.5μm程となる。
類似種
よく似たキノコとして、
・キツネノカラカサ
・クリイロカラカサタケ
などが挙げられる。
「キツネノカラカサ」は全体的に鱗片の密度が薄い点でその違いは明らか。
「クリイロカラカサタケ」は本種に比べると小型で柄が細く、鱗片がより濃色で密に覆われるなどの違いがある。
毒成分・中毒症状など
毒成分は猛毒の「アマトキシン類」を含むことからタマゴテングタケやコレラタケなどと同様の症状を起こすとされる。
具体的にどのような症状が出るかというと、
食べればおよそ6〜24時間ほどでコレラ様の激しい腹痛、嘔吐、下痢などを引き起こす。症状は1日あれば収まるが、これら症状は1段階目に過ぎない。
2段階目の症状が現れるのは数日後。
肝臓や腎臓の細胞が破壊され、肝障害による黄疸や肝臓肥大を起こし、最悪の場合は呼吸困難の進行、昏睡、劇症肝炎、腎不全などによって死に至る。
…というものである。
トルコ南部では、本種による二件の中毒例が報告され、中毒者は11人、そのうち2人が死亡している。
カラカサタケと誤植して中毒した例もあるらしいが、詳細は不明。
余談
🍄本種は長沢栄史監修「日本の毒きのこ」で写真と共に掲載されているが、写真はイタリアで撮られたものになっている。日本ではやはり確かな発見例がないのだろうか。
🍄種小名の「helveola」は 「yellowish hélvus(イエローイッシュ・ヘルヴス)の略で、イエローから分かるように「黄色がかった」の意味を持つ。
🍄本種によく似た猛毒キノコとしてLepiota brunneoincarnata、L.subincarnataなどが存在するが、これらも同様に国内未記録のようだ。
🍄「キツネノカラカサ」という和名の由来は狐が使うカラカサタケ、または狐が出てきそうな風情のある場所に発生するカラカサタケ類のキノコ、などから来たと考えられる。
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