最終更新日:2017年9月3日
シモコシ(霜越、学名:Tricholoma auratum)とは、キシメジ科キシメジ属に属するキノコ。シモタケとも呼ばれる。霜越という和名は冬が近づいて霧が降りる寒い時期に生えてくることが由来である。
ほぼ同じ形態を持つキシメジ(T.flavovirens)というキノコがあり、これらを同種とする説もある。この二つは日本では非常に美味しいキノコとして親しまれてきたが、とあることが原因で毒キノコに分類された。詳しくは後述。
ここでは食用としてのシモコシと、毒菌としてのシモコシに関して書いておくことにする。
特徴
霧の出る秋遅く、主に海岸近くのクロマツ林に発生するが、土壌の環境さえ整っていれば内陸にも発生することが確認されている。
傘は怪5〜10cm、初めまんじゅう形のち中高の平らに開く。表面は平滑で、色は鮮黄色、中央は帯褐色の細鱗片が付着する。
ヒダは鮮黄色で、柄に対して湾生〜離生し、やや幅狭く密。
柄は太く短い。表面は平滑で、傘と同色。肉はほぼ白色で苦味、辛味はない。
胞子紋は白色。胞子は楕円形、表面は平滑で、大きさは6〜8×4〜5μm程となる。
よく似たキノコ
キシメジ、カラキシメジ(食不適)、ニオイキシメジ(食不適)が形態的によく似ている……というか齧ってみないと殆ど見分けが付かないことも。
キシメジは広葉樹林に発生し、本種と比べ柄が細く、苦味を持つ点で区別できる。
カラキシメジはキシメジと形態は同じだが、名前の通り辛味を持っている。
ニオイキシメジは形態こそ似ているものの、カーバイドガス臭とも例えられる強烈な臭いがあるので容易に区別できる。
調理法
シモコシは風味に癖は無く、歯切れも良く極めて美味しいキノコである。
ただ本種は基本的に松葉の下に埋もれるように発生するので、砂や葉が多く付着している分、下ごしらえに時間が掛かるのが難点。
キシメジの方は苦味があるので、これを取り除くために水に晒す、茹で溢し、塩漬けなどして苦味を取ってから調理すると良い。
基本的にどんな料理にもよく合い、和食、洋食なんでも構わない。そのまま焼いて食べるもの悪くないが、良い出汁が出るので汁物や煮物、特に炊き込みご飯はおすすめの一品である。
なぜ毒キノコ扱い?
食菌としてこれほど優秀なキノコがなぜ毒キノコに分類されたのか。
日本において中毒例は1件も報告されていないが、ヨーロッパでは当時食用とされていたT.equestre(シモコシ・キシメジの近縁種、または同種)による死者を含んだ食中毒がいくつか報告された。中毒者は12名、そのうち3名が死亡している。
中毒のメカニズムはこのキノコに含まれる毒成分により骨格筋が融解し、筋細胞成分が血中に流れ出すことで発症する横紋筋融解症で、重症な場合は腎不全に至る。
中毒者は発症前の2週間でT.equestreを3回以上食べていたことから、何回か続けて食べる、あるいは一度に大量摂取することにより発症するものと思われる。
そして中毒事故によりT.equestreの近縁種であるキシメジにも有毒の疑いが出始め、T.equestreと同種である可能性を考えた結果、毒キノコに分類されることになった。
これに従いキシメジと同種という見解もあるシモコシも同様に毒キノコとして扱われるように。何とも腑に落ちないザル理論である。
毒成分・中毒症状
シモコシ・キシメジに毒成分を含むかは不明だが、T.equestreには2-シクロプロペンカルボン酸が含まれる。これはニセクロハツに含まれる毒成分として有名で、生物が持つ毒素としては最小の分子である。
中毒症状に関しては「日本の毒キノコ」で以下のことが書かれていた。
「数回続けて食べた1〜3日後、筋力の低下、吐き気、発汗などの症状が現れる。軽症なら約1ヶ月で回復するが、重症の場合は心筋炎、不整脈、腎不全を経て死に至る」
……とのことだ。日本産のものは毒性が疑問だが、これを食べるかどうかは自身の判断に任せる。日本産は食べても問題ないと思われるが、ヨーロッパ産のものを食べるのは避けるべきだろう。
余談
🍄シモコシの学名である「Tricholoma auratum」には「黄金色のキシメジ」という意味がある。キシメジも岩手では地方名として「キンタケ」とも呼ばれ、この二種はところどころ金色を協調しているのが分かる。
🍄同じく和名に「霜」と付くキノコとしてシモフリシメジ(食)があるが、和名の由来はシモコシと同じく、霧の降りる秋の遅くから発生することから来ている。こちらは地方名で「ギンタケ」とも呼ばれる。
🍄余談の余談だが、キンタケとギンタケ……これを聞いて金さん銀さんを思い出すのは自分だけなのだろうか。
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