初めに、「三大」とは、三つの代表する事物のことを意味する。三大には様々なジャンルが認定されており、例えば日本三大祭り(祇園祭、天神祭、神田祭)、世界三大珍味(トリュフ、キャビア、フォアグラ)など、世の中には「三大○○」というものが数え切れないほど存在する。
三大キノコは、その名の通りキノコを代表する3つの菌である。一言に三大キノコとは言っても色々なものが存在するので、それらをこの記事でまとめておくことにする。
世界三大キノコ
三大キノコとして最も有名なのはこちらだろう。
「マツタケ」、「トリュフ」、「ポルチーニ」の三つであるが、キノコに詳しい方であれば間違いなく知っているはず。
マツタケ
これに関しては言わずもがな。秋の味覚として有名だが、輸入品はともかく、国産のマツタケはあまりにも高価ゆえ、実際に食べたことのある若者は少なくなってきているのではないだろうか。
長年に渡って研究されてきた人工栽培もいまだ確立されておらず、旬である秋でしか手に入らない。
日本ではマツタケの独特な香りが好まれ珍重されるが、逆に言うとこの香りを好むのは日本人だけである。
他国においてマツタケの香りはひどく不評なことも有名であり、軍人の靴下や風呂に入っていない人の臭いなどと言われ、欧米人には吐き気を催す臭いと言われる始末。
だが知名度に関しては日本での圧倒的な人気からか、ここ数十年で各国に広がりつつあるのも事実だ。
傘が完全に開いていたり、傷んでいる個体は毒成分を含み、激しい下痢、嘔吐を伴う食中毒の原因になるため、傘が開く前の新鮮なものを採るのが望ましい。
美味しい食べ方としては土瓶蒸し、マツタケご飯などがおススメ。その他にもシンプルにマツタケ焼き、ホイル焼きなどにするのも良い。
トリュフ
世界三大珍味の一つとしても知られており、その高い知名度は日本でも例外ではない。
一言にトリュフと言ってもいくつかの種類が存在し、一部の種は日本にも自生する。
特に有名なのが白トリュフ・黒トリュフの二つがであるが、価格においては白トリュフが何倍も高値になり、2007年にイタリアで発見された1.5kgの超巨大な白トリュフは、22万ユーロ(日本円で約2400万円)で落札されたそうな。
白・黒トリュフはそれぞれ調理法が異なり、白トリュフは香りが強いので、生のまま薄くスライスして料理にふりかける。
つまり食べ物というよりは香料としての扱いが一般的である。黒トリュフはソテーや肉料理などに用いられる。
ポルチーニ
ポルチーニはヨーロッパで広く親しまれるキノコの王様だ。ポルチーニはイタリア語で「子豚」の意味を持つが、丸く膨らんだ姿から来たものと思われる。
日本では乾燥品がスーパーなどで販売されることがしばしばあり、国産のマツタケに比べれば安価で手に入るが、生のポルチーニは旬である夏〜秋でしか手に入らない。
日本においての知名度が他の二つ比べて劣るが、単純にキノコとしての美味しさはこちらの方に軍が上がる。ポルチーニは味・香り・食感ともに優れているが、レシピがパスタや肉料理などに偏りがちなのが欠点。
本種は日本国内でも一部の地域に自生しており、「ヤマドリタケ(山鳥茸)」の和名を持っているが、一般人には殆ど知られていないのが現状。
欧州三大キノコ
日本人には馴染みが薄いが、ヨーロッパにおいて特に人気の高いキノコが「アンズタケ」、「アミガサタケ」、「ポルチーニ」の三つである。ポルチーニのことは上記に述べた通り。
アンズタケ
世界中に広く分布する有名なキノコの一つで知られ、杏子のような香りがするのが名前の由来。
フランスでは「ジロール」とも呼ばれ、杏子の香りは松茸やトリュフとは違い、洋の東西を問わずに世界的にも親しまれている。
人工栽培は難しく、シイタケなど栽培されているものを除いて最も多く食べられているキノコの一つでもある。
このように優秀な食菌として人気の高いアンズタケだが、放射性金属を蓄積しやすい性質を持っており、1986年に起きたチェルノブイリ原発事故の後、アンズタケに放射性セシウム137が多く濃縮していることが判明し、輸入が禁止される事例があったという。
また、微量ながらも猛毒成分(普通に食べていれば中毒に至らない量)を含むことから日本では毒キノコとして扱われる始末である。
アミガサタケ
アミガサタケはその独特な形態から日本ではほとんど食べられることはないが、ヨーロッパでは美味な食菌として珍重され、特にフランスでは「モリーユ」という名で高級食材として親しまれている。
人工栽培は不可能ではないが、安定した栽培法は現在のところ確立されていない。
本種はトガリアミガサタケ、チャアミガサタケなど数種に分けられているが、正確な同定が困難な上、食毒の違いもないのであまり気にする必要はない。
類縁関係は薄いが、シャグマアミガサタケという猛毒キノコがあり、フィンランドでは毒抜きをして食べられている。
調理法としてはクリームパスタやホワイトソースなど、乳製品と合わせると良い。汁物や炊き込みご飯などの和食はあまり相性が良くないので注意。
また、アンズタケと同様、食用とは言え微量に毒成分を含むので、食べすぎは禁物だ。
癌(がん)に有効と言われる三大キノコ
一般的に食べられるキノコ類の中には抗癌作用を持つことが知られている。
例えばシイタケから抽出されたレンチナンは、癌に対する免疫力を高め、マイタケに含まれるMDフラクションには癌の発生や増殖、転移などを阻止し、癌の予防になるのは有名な話だ。
数あるキノコの種類の中でも特に癌に対して有効とされるのが「メシマコブ」、「アガリクス」、「ヤマブシタケ」の三つである。
画像はアガリクス。癌の予防、抗癌作用があるとされる。
メシマコブ
サルノコシカケの仲間で、効能は抗癌剤のように直接、癌細胞を殺すようなものではなく、癌に対抗するためのNK細胞を初めとした免疫細胞を強化させる役割を持つ。
メシマコブには高分子多糖体である「β‐グルカン」や、いくつものタンパク質が結合した「タンパク複合体」などが含まれる。
これらが弱体化した免疫細胞を活性化させ、癌の予防や改善につながるのだ。中国では桑黄(そうおう)とも呼ばれ、古くから漢方薬として用いられている。
アガリクス
アガリクス(和名:ヒメマツタケ)はマッシュルームと同じのハラタケ属である。
β‐グルカン、α−グルカン、β−ガラクトグルカン、キシログルカンなどの多糖体が多く含まれ、これらが癌に対する免疫力高める。
アガリクスとは本来、ハラタケ属のことを意味するが、日本においてアガリクスは一般的にヒメマツタケのことを指す。
ヤマブシタケ
ヤマブシタケは一見するとキノコとは思えない異様な形態をしており、一度画像を見ておくことをお勧めしたい。
ヤマブシタケ固有の成分である「ヘリセノン」は認知症の予防、改善効果があることで知られている。
さらにβ‐グルカンをアガリクスよりも多く含み、癌の改善にもつながるとされる。
世界三大栽培キノコ
安全にキノコを食べたいのであれば、やはり栽培されたものをスーパーで買うのが一番の近道だろう。
現在では50種類以上のキノコが栽培可能になり、お手軽な価格で買えるようになった。研究者の努力と苦労に感謝したい。
その中でも特に多く栽培されているキノコが「シイタケ」、「マッシュルーム」、「フクロタケ」の三つだ。
画像はマッシュルーム。世界で最も栽培されているキノコ。
シイタケ
シイタケは生産量こそエノキタケに及ばないものの、日本でもっとも生産額が多いキノコとして知られる。
シイタケ栽培の歴史は長く、日本では江戸時代初期から栽培がなされていた。
その栽培法は当時、原木栽培が主であったが、原木の減少・価格の上昇などによって年々菌床栽培の割合が高くなっている。
現在では和食から洋食まで幅広く使われるようになり、日本人にはお馴染みのキノコとなっているが、一方でシイタケの食感が苦手な人が多いのも事実。
マッシュルーム
マッシュルーム(和名:ツクリタケ)は生産量、消費量ともに世界一。つまり世界で最も食べられているキノコである。本来、マッシュルームは英語でキノコ全般を指す言葉であるが、日本では一般的にホワイトマッシュルーム(ツクリタケ)のことを指している。
調理は一般的にパスタ、グラタン、アヒージョなどの洋食に使用され、味噌汁に使われるケースはかなり稀だ。
フクロタケ
日本人とってあまり聞きなれない名前だが、世界三大スープの一つである「トムヤンクン」に入っていた謎のキノコを思い出してほしい、これこそがフクロタケ。世界的にはマッシュルーム、シイタケの次に生産量、消費量の多いキノコで、主に中国南部、東南アジアにおいて栽培が盛んに行われ、特にタイでは最も生産量の多いキノコである。
主に中華料理に使われるが、風味に癖がないので味噌汁や和え物など、和食にも応用するのも良い。
その他の三大キノコ
日本三大キノコ
「マツタケ」、「シイタケ」、「エノキタケ」の三つ。日本で知名度の高いキノコを三つ選べ、と言ったらこの三つが選ばれるだろう。マツタケ、シイタケのことは上記に述べている。
エノキタケは日本で最も生産量の多いキノコで、通称「えのき」と呼ばれる。
エノキタケは天然ものと栽培もので形態が大きく異なることも知られており、スーパーなどでよく見る白く細長いものが栽培品だ。
そのため、キノコ狩りの際に「これがエノキです」と言っても一般人には通じないのが殆どだろう。
三大薬用キノコ
「アガリクス」、「マイタケ」、「冬虫夏草」の三つ。アガリクスは上記に述べた通り。
「マイタケ」はX-フラクション、MD-フラクションなど豊富な栄養を持つ。肥満や糖尿病、生活習慣病などの予防、改善効果を期待でき、高い抗ガン作用もあることが知られる。
人工栽培により、今でこそ安く買えるマイタケだが、天然のマイタケになるとマツタケと同様かそれ以上の高価格になる。
「冬虫夏草」とは、セミやガなどの昆虫に寄生するキノコで、冬眠している幼虫から体内に侵入して栄養を吸収し、やがて幼虫は土の中で死んでしまう。
暖かくなる頃には子実体が発生し、これが草のような姿に見えることから冬虫夏草と名がつけられた。
冬虫夏草には300種以上が存在するが、一般的に冬虫夏草とは「Ophiocordyceps sinensis」のことを指し、中国では優秀な漢方薬として使用されている。
猛毒キノコ御三家
「ドクツルタケ」、「タマゴテングタケ」、「シロタマゴテングタケ」の三つ。
世界で最も多くの人間を昇天させてきた恐るべき毒キノコが、この猛毒キノコ御三家というもの。ある意味、世界三大キノコよりも有名かもしれない。
三大ではなく御三家だが、これらも含めて紹介しておく。
誤食キノコ御三家
「ツキヨタケ」、「カキシメジ」、「クサウラベニタケ」の三つ。
日本において毒キノコ中毒の殆どがこの三つのキノコで埋まる。
特にツキヨタケは日本で最も中毒者の多いキノコで、初心者は特に注意したいところだ。
余談だが、ブログ主が好きなキノコはマイタケである。