キノコの資料をゆっくり見ていってね!

毒キノコ好きの毒キノコ好きによる毒キノコ好きのためのサイト 毒キノコ図鑑……のような何かである

【幻覚キノコ】ワライタケの毒成分・中毒症状など

最終更新日:2023年8月24日(画像はWikipediaより)

f:id:coruthi:20191120082703j:plain

ワライタケ(笑茸、学名:Panaeolus papilionaceus)とは、オキナタケ科ヒカゲタケ属に分類されるキノコ。日本で最も有名な毒キノコの一つとして名高い知名度を持つ。

1917年(大正6年)の石川県で発生した食中毒をきっかけにこの和名が付けられたが、古典落語で「笑い茸」と表する噺があったことから、それ以前も存在が知られていたと思われる。

本種は毒成分としてシロシビンを含有し、幻覚作用をおこす「マジックマッシュルーム」の一つとしても知られる。

マジックマッシュルームは日本で現在、麻薬原料植物に指定されており、これを許可なく採取・所持すると罰せられてしまう。

名前のよく似たオオワライタケというキノコもあるが、形態は大きく異なり本種との類縁関係は非常に薄い。

特徴

春〜秋にかけて、主に牛・馬などの糞上や肥沃な畑地に単生〜群生する。洋の東西を問わず、全世界に広く分布する。

傘は径1〜6cm、形は半球形〜ベル形、時に中央が膨らむ。表面は淡灰色〜灰褐色、中央は黄土色〜褐色を帯び、しばしば不規則にひび割れ、縁はヒダの端よりも突出している。

ヒダは柄に対して直生〜上生し、やや幅が広く疎。色は始め灰色、のち胞子の成熟に従って暗色をおび、最後はほとんど黒色となる。また、縁は白色である。

柄は長さ8〜15cmで、細長く中空。表面は灰色〜赤褐色で、白色の微粉に覆われる。

胞子紋は黒色。胞子はほぼ楕円形で、大きさは13〜18×8〜12μm程となる。

同一種の説

ワライタケ、ヒカゲタケ、サイギョウガサ、Panaeolus campanulatus(和名なし)など、これら4種は当時、別種として扱われていたが、実際には環境よって見た目が変わるだけで同一種ではないかという見解がなされている。

いずれも同じ毒性を持つと考えられており、口にしてはならない。

毒成分・中毒症状

含まれる毒成分はコリン、アセチルコリン、シロシビン、5-ヒドロキシトリプタミンなどのインドールアルカロイドを含み、これらは中枢神経、および末梢神経に作用する。

下痢、嘔吐など毒キノコの典型的な消化系症状は報告されておらず、主に精神状態に対して強く影響を及ぼす。

食べると30分〜1時間後に異常な興奮、幻覚症状、幻聴などの精神錯乱を引き起こし、その他めまい、麻痺、手足の痺れが生じる場合もあるという。

ムスカリン中毒のような症状を起こすとも言われるが、詳細は不明。

シロシビン含む幻覚性キノコは稀に痙攣や昏睡などの重症に陥るケースもあるが、

本種の場合は毒性が低く、症状も数時間ほどで収まるので命に関わることはないと思われる。

中毒例

本種をワライタケと命名した川村清一氏の著書には、食中毒に関する詳細が記載されており、これを参考に中毒記を紹介しておくことにする。

 

それは今から90年以上前、大正6年5月11日、石川県で起きたことだった。とある男性は隣に住んでいた友人から名前も知らぬまま採取したキノコを分けてもらった。

それがワライタケとも知らずに…

男性は晩、そのキノコを家族(妻、母、兄)と汁物にして食べたが、しばらく経つと妻の様子がおかしくなり始める。男性はあわてて医者を呼んだが、そのころには症状が悪化していた。

妻は丸裸になって踊り、意味もなく笑い、飛び跳ね、歌い、

更には三味線を引くようなマネをして大騒ぎ。

その後は妻に続いて兄、そして男性もおかしくなり、錯乱状態は数時間にわたって続いた。

やがて男性は眠りについたが、翌日の目覚めもさながら二日酔いのような有様。一方で母はキノコをほとんど口にしていなかったので比較的軽い症状で済んだが、

自分のせいで迷惑をかけたからと同じ言葉で一晩中謝り続けていた

 

…との事である。

医師の診断によれば腹痛、下痢、嘔吐などといった症状は一切見られず、体温にも異常はなかったという。

また、1991年7月14日沖縄県読谷村でも食中毒が発生している。

家庭菜園にあったキノコを油で炒めて食べた3人の家族がしびれ、笑い出すなどの症状をおこし、20個あまり食べた男性は呼吸困難に陥って入院。しかし男性は、

呼吸を忘れるレベルの興奮状態になっていた。呼吸困難ってそういうこと…?

更には「魚に捕食される体験」「湾岸戦争の参加体験」など、

わけの分からない幻覚症状をきたし、これを機にシロシビン含有疑惑が出てくる。

研究を行ったところ案の定で、以降はマジックマッシュルームとして扱われるようになった。

ワライタケ含めて幻覚キノコは社会問題となっており、注意を要する。

余談

🍄種小名のpapilionaceusラテン語で「蝶・蛾のような」の意味を持つ。傘の色や形を蝶に見立てたのだろうか。

🍄今昔物語集では尼さんたちが、とあるキノコを食べて笑って舞い踊る「舞茸」という話があるが、実際に食べたのは現在スーパーでも買える「マイタケ」ではなくワライタケ、もしくはオオワライタケと推測されている。

 

毒キノコ図鑑 TOP↓

coruthi.hatenablog.com