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ヒカゲシビレタケの毒成分・中毒症状など

最終更新日:2018年11月21日

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ヒカゲシビレタケ(日陰痺茸、学名:Psilocybe argentipes)とは、モエギタケ科シビレタケ属に属するキノコの一種。

食べると幻覚症状をきたす幻覚菌で、いわゆるマジックマッシュルームの一種である。現在では毒キノコの扱い。

日本ではマジックマッシュルームを使用して犯罪、騒動などを引き起こし社会問題となり、2002年には「麻薬、麻薬原料植物、向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令」が改正された。これにより本種は麻薬原料植物に指定され、採取するだけでも罰せられてしまう。

特徴

春〜秋にかけて、庭園、公園、道端、林地などに発生し、日陰のある場所に出てくることが多い。

傘は初め円錐形、のち釣鐘型に開いていく。表面は湿った場所では暗褐色で乾くと黄土色〜淡褐色となる。

ヒダは初め灰褐色、のち紫褐色となり、柄に対して直生〜上生し、幅狭く密。

柄は傘とほぼ同色で、下部は初め繊維状の糸菌に覆われているが、やがて白いだんだら模様となる。

柄や傘は傷つけると青変するが、これは殆どのシビレタケ属に共通する特徴である。土臭く、味も非常に不味いので、仮に毒性がなくとも食用にはならない。

胞子紋は紫褐色。胞子は卵形で、大きさは6〜7.5×4〜4.5µm程となる。

毒成分

含まれる毒素はインドールアルカロイドの一種である「シロシビン(Psilocybin)」で、幻覚症状を起こす原因物質となる。

これは中枢神経にある伝達物質であるセロトニンに構造が似ており、セロトニン受容体に作用して幻覚、精神錯乱を引き起こすと考えられている。熱に対して強く、加熱しても殆ど分解されない。

日本ではシロシビン、またはシロシンを含有するシビレタケ属、ヒカゲタケ属、アイゾメヒカゲタケ属など、ヒカゲシビレタケも含めて計13種類のキノコが採取の規制されている取り締まり対象菌となっている。

その一方でシロシビンを含むワカクサタケ、ビロードベニヒダタケ、チャツムタケなどや同じインドールアルカロイドの「ブフォテニン」を含むコテングタケは何故か規制対象外である。

ただし、これらも含めて後に規制対象に入る可能性もあるので注意が必要。

中毒症状

摂取すると30分〜1時間ほどで悪寒、吐き気、ふらつき、めまいなどの症状を経て興奮、幻覚、幻聴、精神錯乱、麻痺、手足の痺れを引き起こす。本種は日本のマジックマッシュルームの中でもシロシビン含有率が高く、2〜3本ほど食べると中毒するとされる。

本種の毒性で死に至ることはほぼないが、幼児や高齢者が大量に摂取すると痙攣、昏睡などの重症に陥る場合もあり、海外ではシロシビンを最も多量に含むPsilocybe cyanescensを食べた女児が死亡した例が報告されている。

中毒例・トリップ体験

中毒例は平成元年〜22年にかけて、少なくとも20件、60名の中毒者が記録されており、これは毒キノコの中でも多い部類に入る。

マジックマッシュルームによるトリップ(麻薬による幻覚症状)は徐々に出てくるものではなく、初期症状(吐き気、めまいなど)を経て突然くるという。感覚としては急に別の世界にワープするようなものか。

幻覚症状に関しては様々な情報があるが、具体的な例を挙げると「目を開けたらお花畑の真ん中にいた」「鏡を見ると体がスライムの様にとろけていた」「居るはずのない鬼ごっこの子供を呼びながら探し回った」「自分の腕が伸びた」「カマキリが柴犬ほどの大きさに見えた」「『神』のような存在と対話した」など、トリップ体験はその人の精神状態によって異なる。

いずれにせよ、間違っても面白半分で食べようしないことが重要である。時に暴力、犯罪、自殺など最悪の事態を抱きかねないからだ。

余談

🍄現在では採取が規制されているマジックマッシュルームだが、近年にインペリアル・カレッジ・ロンドンが研究により重症なうつ病を和らげる効果があることが判明された。10年以上うつ病を患っていた患者にシロシビンを投与したところ、わずか数カ月でうつ病が改善されたという。これは小さな規模で行われた実験なので、素人がうつ病改善のために食べようなどとは思わないほうが良いだろう。

🍄ヒカゲシビレタケによる食中毒ではないが、海外ではある種のマジックマッシュルームと間違えてヒメアジロガサを食べ死亡した例が報告されている。毒キノコと間違え毒キノコを食べるとは、これはいかに。

🍄東方公式漫画の一つである東方三月精では、三妖精たちが団子をヒカゲシビレタケと同様に幻覚性のキノコであるジンガサタケ(陣笠茸)にすり替えるという話が存在する。そのお話では三妖精がすり替えた後、更に氷の妖精が氷団子にすり替え、持ち帰って食べた氷精が一晩中、幻覚と幻聴に悩まされ、幕を閉じた。めでたしめでたし 


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