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ニセショウロの特徴・毒性など

最終更新日:2023年7月31日

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ニセショウロ(偽松露、学名:Scleroderma citrinum)とは、ニセショウロ科ニセショウロ属のキノコ。有毒として知られる。

名前通り「ショウロ(食用)」によく似た偽物のようなキノコだが、ショウロとは生物学的に殆ど縁がなく、発生環境も異なる。

ニセショウロ類は日本で20種類以上が記録されるが、いずれも類球形で単純な形態ゆえに種類の同定が難しく、いくつかの未知種が隠れている可能性もある。

このグループの多くは有毒、あるいは食不適とされ、ニセショウロ類で食用になる種は無いという認識で問題ないだろう。

特徴

初夏〜晩秋にかけて、針葉樹林、広葉樹林などの林内や公園などの地上に発生する。

子実体の大きさは径2〜5mcほどで、形は類球形。表面の皮は厚く、黄色を帯びた黄土色〜褐色で、成熟にしたがい不規則にびび割れる。

胞子は始め白色。成熟するに従って上の画像のように黒色となるが、これはあらゆるニセショウロ類に共通する特徴である。

子実体に柄と呼べるものは無いが、基部が根状に伸びて柄のように見えることがある。

類似種

よく似たキノコは主にショウロや本種以外のニセショウロ類である。

ショウロは本種とは違いクロマツアカマツなどの海岸松林でしか発生せず、成熟しても胞子が黒色にならない点で区別できる。

そして他のニセショウロ類だが、ハッキリ言って種類同定には顕微鏡観察が最低限とされるほど肉眼では判別困難なグループである。

本種は切断すると表皮の断面がピンク色に変色する特有の特徴を持つが、個体差もあって他のニセショウロ類との判別には不十分。

種を特定できてもほぼ食用にならないので、余程のマニアか研究者でもない限りニセショウロ類と分かった時点スルーしたら良い。

毒性

毒成分は現時点では不明だが、レロシトリン(Sclerocitrin)という色素を含んでいる。

症状は摂取すると30分〜3時間ほどで現われる。

激しい腹痛、下痢、嘔吐などの胃腸系の症状を起こし、時に発熱、皮膚の蒼白、蕁麻疹、めまいなどの症状が現れ、ひどい場合は失神に陥ることもあるという。

日本では2007年〜2008年に2件の中毒例が報告されており、ヨーロッパでもトリュフと間違えて中毒する例が後を絶たない。

死亡例こそ報告されていないが、比較的強い毒性を持っており、注意が必要である。

余談

🍄本種は海外で「Common Earthball(コモン・アースボール)」とも呼ばれ、「アースボール」はニセショウロ類全般の通称とされる。

🍄属名のSclerodermaギリシャ語で「硬い」を意味する「sclera」、そして「皮膚」を意味する「derma」に由来している。またSclerodermaは全身の皮膚が硬くなる原因不明の病「強皮症」を意味する言葉でもある。

🍄種小名のcitrinumラテン語で「レモンイエロー色の」という意味を持つ。

🍄本種はかつてシノニムとして「S.aurantium」「S.vulgare」など複数の学名があった。シノニムとは命名法において同一種に何かの原因で2つの学名がついてしまったことを意味する。

この場合どちらかを正しい学名にするか、別に新しい学名を作らなければならない。そうしてニセショウロは現在「S.citrinum」が正しい学名となっているようだ。


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